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海外では選挙をめぐって支持者同士が暴力的な激突をしたり、人々が選挙関係者や施設を襲撃したりといった激しい事件が見られることがたまにあります。選挙に関係してこのような激しい事件は現代の日本ではまず聞きません。
ただ、過去を見てみるとこのような激しい事件が起きたことがないわけではないのです。様々な激しい事件が存在しますが、今回は投票された票が集まる開票所で暴力的な騒乱が起き、開票が妨害されたという事例をいくつか紹介します。
1959年の和歌山市長選は、保革対立や現職の四選阻止などをめぐって、5人の候補が争う混戦模様となっていました。
投票は通常通り行われましたが、開票時にトラブルが起きました。ある開票所で投票箱の鍵が入っていた封筒の封印が破られていたということなどをめぐり、現職以外の4候補の立会人が選挙に不正があるとして抗議したのです。
このため、いったん開票作業が停止しました。しかし、不正が認められないとして再び開票作業を行うと発表したところ、詰めかけた群衆のうち約400人が騒ぎだし、開票所入口で警備の警官とつかみ合いの事態になりました。
騒ぎは一時収まったものの、また激しさはぶり返し、ついに開票所に群衆がなだれ込む事態に発展しました。この時の騒ぎはかなり激しかったようで、新聞の報道では群衆は机やいすを投げつけて警官と大乱闘を演じ、バケツの水や開票所にあった消火器を警官にかける者すらいたと記録されています。
群衆、警官双方から負傷者を出したものの、400人もの警官隊を出動して事態は鎮圧されました。そして、警官の護衛の中、開票作業が行われ、最終的に現職の当選が決まっています。
青森県の津軽地域はしばしば激しい選挙になり、合法・非合法問わない戦いになることもよくあり、この様子は「津軽選挙」として知られています。1975年に青森県の津軽地域の中里町(現・中泊町)で行われた町長選も現職と町の有力者の新人の保守分裂の激しい戦いになりました。
投票が終わって両派の支持者が詰めかける中、開票が行われ、最終的に現職の当選という結果が発表されました。しかし、ここで思わぬことが起きます。95.1%と発表していた投票率をミスがあったため96.4%と変更したところ、落選した新人側の支持者が抗議をしたのです。
これを受けて票の再点検をしましたが、同時に行われた町議補選でもミスがあったことなどを理由に突如数人が開票台に上がり、投票用紙をばらまき開票所が騒然となりました。そして、これを発端として、人々が開票所になだれ込んで大騒ぎとなりました。
当時の報道によると、地元警察署長が町民に落ち着くように呼びかけたものの全く効果がなく、約100人の警官が応援に来たことや落選した側の新人候補がなだめに入ったことでこの場は収まりました。しかし、後には土足で踏まれてぺちゃんこになった投票箱や巻き散らかされた投票用紙や記録書類などが散乱していました。
この日は何とか収まったものの、それでこの騒動は終わりではありませんでした。翌日に新人派の群衆が集まって町選挙管理委員長に選挙のやり直しを要求する騒ぎに発展し、群衆に囲まれた町選管委員長は選挙のやり直しを約束してしまいました。
これを受け、県選挙管理委員会は再選挙の法的根拠もなく、必要もないとし、町選管に説得に向かいます。しかし、身の危険を感じて警察に保護されていた町選管委員長が突如失踪してしまい連絡が取れなくなるという驚くべき事態が起きました。
このため、当選人の告示や当選の証である当選証書も発行されず、現職町長の任期が終わってしまったため、一時は町長不在という事態に陥りました。しかし、何とか町選管委員長と連絡が取れ、県選管の説得に応じたため、機動隊300人などが警戒する中、現職側の当選を告示し、当選証書を発行しています。