自殺念慮のある子供の表情の出方には、ある特徴があった!?
微表情研究者の清水建二です。前回、大人の自殺と表情との関係について考えました。本日は、子どもの自殺と表情との関係について考えたいと思います。子どもの自殺に関わる表情について考える前に、前回の内容を簡単にまとめます。
「自殺の兆候を示す特定の表情は発見されていない。しかし、自殺とうつとは関連があるとされている。そこで、うつ病患者の病状と表情との関係を調べると、うつ病が重いとき、病状が軽いときに比べ、笑顔と悲しみに関連する表情が少なく、軽蔑と羞恥に関連する表情が多く、頭の動きは減少する傾向がみられた。これらの傾向は、うつ気分・罪の意識・自殺念慮についての質問返答時に生じた」
ということです。うつとスペクトラムを描き得る自殺は、感情表現やコミュニケーションへの意欲という観点から考えると、人と距離をとろうとする状態の延長と形容できるのかも知れません。
それでは、自殺を考えた(る)子どもはどのような感情表現を見せるのでしょうか。Jamesら(2020)は、自殺念慮経験のある子どもと母親とのコミュニケーションに特異な表情傾向を見出しています。
自殺念慮経験のある子どもと、母親のコミュニケーション
自殺願望や行動は幼児期から生じる可能性が指摘されており、そのため理論家や研究者らは親子間関係に何らかのヒントがないか考察を重ねています。
特に、母親は子どもとのやり取りにおいて、表情の抑制や発現に重要な役割を果たしていると考えられています。そこで、Jamesら(2020)は母子間のやり取りにおける表情に焦点を当て実験をしました。実験のプロセスは次の通りです。
353組の親子に実験に参加してもらい、その中の44組に自殺念慮経験のある子どもが含まれていました。子どもの年齢は7歳から11歳です。
それぞれの親子にポジティブな会話とネガティブな会話をしてもらい、会話中の表情を計測しました。
ポジティブな会話では、母子間で二人だけで過ごす休日について4分間計画してもらい、ネガティブな会話では、お互いの意見が最も合わない話題とその解決策について6分間話してもらいました。
ポジティブな表情として口角の引き上がり度合い(笑顔に特徴的な動き)を計測し、ネガティブな表情として眉間のしわの収縮度合い(怒りに特徴的な動き)を計測しました。