同様に、あるアメリカ人男性はこれが茂木大臣に限った話ではなく、
より広範な偏見の表れだと指摘する。
「政府が外国人にいてほしくないと思っていることに対して、私たちはどう感じればいいのか。ダメな政治家はどこの国にもいますが、少なくとも
アメリカでは酷い発言をしたときに『それはダメだ!』と言う人がたくさんいます。今回の件について
日本人に感想を聞いても、多くの人は何の話をしているのかすらわからないでしょう。そもそも、
茂木が誰なのかも知らない人が多いはずです。知っていても、
特に意見はないという人がほとんどだと思います。私にとっては、そのほうが酷い話です。『どうでもいいや。こいつら(政治家)は無視しよう』という反応が、より事態を悪くしています。これは
外国人の問題に限った話ではなく、女性やLGBTQ、ミックスの人たちについても同じことが言えると思います」
この男性は、そのうえで今回の茂木大臣の発言にいたるまでには、
とある背景があったのではないかと推測する。
「
あいつ(茂木外務大臣)はクソ野郎ですよ。どうやったら、あんなポストに就けるんですか? 問題になったやりとりをしていたジャーナリストの方をフォローしてきましたが、
彼女はこれまでもコロナによる外国人の再入国禁止を取り上げていました。大臣は彼女のことを知っていて、
元から憎んでいたんじゃないですかね」
また、
記者会見の仕組みそのものに問題があるという意見もあった。本来であれば、その場で質問に答えるべきところ、「茶番」とも揶揄される
事前の質問通達に慣れきってしまっていたせいではないかというのだ。
「質問に対して答えることができない、もしくは答えたくないならしょうがないけど、わざわざ敬語を使って『日本語、わかっていただけましたか』と言い返すのは……。
傲慢な官僚的態度に思えます。まあ、そもそも
日本の『記者会見』というのは事前に質問をもらって、演説のように読み上げることですけど……」(ポーランド人)
そもそも、茂木大臣は「出入国管理庁に尋ねてください」と、
記者の質問にはまるで答えていないのだが、捨て台詞を残したのは「
聞かれたくない質問に答える」ことに慣れていないことに対する苛立ちだったのかもしれない。
ともかく、諸外国に対して日本を代表する立場の外務大臣が、
挑発的、
逆ギレ、
捨て台詞のような発言を公の場で行ったのは、
率直に言って恥ずかしい話だ。
閣僚が「失言」をするたびに、「
発言の切り取り」「
意図が伝わらなかった」と言い訳をするのは、残念ながら珍しい光景ではなくなったが、本当に悪意がなくこういったミスを繰り返しているのだとしたら、
「日本語、わかっていただけましたか」と問いたいのは、国民のほうだ。
<取材・文/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン