マイメロディの腹黒い一面…【サンリオの“うわさ”の正体】
1990年代、空前の「キティブーム」で世間を席巻したサンリオ。だがブームの反動か、その数年後には営業利益が1/3にまで落ち込んだ。奇跡のV字回復を成し遂げ、ロックバンド「KISS」とのコラボレーションなど海外展開も盛んないまのサンリオの”戦略”とは。
近年のサンリオが、テコ入れしたのはキャラクターだけではない。サンリオピューロランドも客層が子どもとその親に偏っていたため、若者や大人の集客に力を入れている。2013年に新エリア「サンリオタウン」をオープンしてキャラクターの世界観を体験できるアトラクションを増やした。テーマパークのオリジナルグッズも取り揃え、若い客層に向けたコンテンツを充実させていった。10代後半~20代の入場者数も、2014年9月は前年比1.5倍になるなど着々と増えているという。
「『ピューロのうわさ100』も夏休みシーズンに若い人に足を運んでもらうための企画でした。WebでバズるようなPRができないか戦略を練った結果、マニアックだけど知ったらおもしろそうなピューロランドの情報を“うわさ”として流し、SNSで拡散してもらうことにしたんです」(サンリオエンターテイメント宣伝部宣伝課・真鍋和弘氏)
“うわさ”では社員の知っている同テーマパークの情報を社内で大量に集め、反応がよさそうなものを1つ1つ精査。マイメロディの腹黒い一面、ポムポムプリンのお尻の穴など、若者にウケがよさそうなものを積極的にフィーチャーしていった。
⇒【動画】ピューロのうわさ42「こうみえて、ゴールデンレトリバーらしい。」 http://vine.co/v/MYAOXrAAqDx/embed
「サンリオにはフランクな面もありますが、いっぽうでまじめな会社でもあります。あまり柔らかいことをすると何をやっているんだって怒られることもあります。ただ、若い人にも来てもらわないとすそ野が広がらない。若いお客様が来てくれるテーマパークは、そのお客様が親御さんになった時にも来てくれる。若い人に『ピューロランドはじまったな』という記憶を残してもらうのが狙いです。そういうところが今後もじわじわと効いてくると思います」(真鍋氏)
「子どもに夢を与える」だけではない。大人や若者に対してキャラクターコンテンツを送り出そうとサンリオは動き続けている。
<取材・文/黒木貴啓>
告知では当時若い人の間で流行し始めていたVineを使うことに。6秒の動画がループされる性質に着目し、マイメロディがカレーを混ぜ続ける、麺の湯切りを延々と繰り返すなど、1つの動きがループすることで楽しく観られる動画づくりを意識した。
結果、各“うわさ”は大きく拡散された。企画全体のリーチ数は重複分をのぞいて243万件に達する。11月6日に米Twitter社が日本で開催したカンファレンス「Twitter for Brands」ではTwitterを利用したマーケティングビジネスの好例として紹介された。
だが、“夢”を伝える事業である以上、ただ面白いからといってすべての企画がやすやすと通るわけではない。例えばポムポムプリンのモチーフを紹介する“うわさ”では、Vine動画でポムポムプリンとゴールデンレトリバーの実物が交互に映し出された。企画段階では、キャラクターデザインがモデルからかけ離れていることが露呈しキャラクターのイメージダウンになるのではと、ほかの社員から否定的な意見も挙がった。しかし真鍋氏は「現代の若い世代に受け入れてもらうPR手法だ」と事例を交えて訴えることで、なんとか案を押し通した。
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