「ナンパで自信がついた」というアラサー男性。モテ商材に頼るも、相変わらず「非モテ」なワケ

結婚のため本命の彼女がほしい

 本人の中で「ナンパ」が生きがいになっていったのなら、それはそれでいいことだ。しかし、結婚願望はあるのか、と話を振ると、少し表情を曇らせる。 「結婚願望もあるんですが……ナンパで引っかける女性は関係が長続きしないことが多いので、本命彼女が欲しくてマッチングアプリを始めました。けど、アプリはアプリでまた難しくて……ネットでナンパするネトナン師のアカウントにテクニックやコツを教えてもらっているけど、リアルナンパより打率は低いし、お金もかかりやすくて。上手くいかないなあって感じです」  結婚願望について聞いたのに、本命彼女を探すための活動も「ネットナンパ」の一環として認識してしまっていることに少し驚いた。ワンナイトラブが目的のナンパと、結婚のための彼女を探す活動は、途中経過が大きく異なってくるように思えるが……。 「ネットでモテてるネトナン師たちは、ネットナンパの延長で、彼女や結婚相手も見つけていくんです。ネトナンとは言っても、マッチングアプリでの出会いってナンパじゃないから、ネット出会いでのモテテクを活用しているだけなんです。と言っても、そんなに簡単にはいかなくて……マッチしてもメッセージが来ないことなんてザラだし、当日に集合場所まで行ってからドタキャンされたこともある」  倉田さんは女性との出会いのすべてに「モテテク」「ナンパテク」を駆使しているように見える。彼の人生を変えたものだと考えると、それに頼ってしまうのも分かるが、本命探しという点においては、現実問題上手くいっていない。それでも、自分にはそれしかないのだという。 「だって、俺自身に中身なんてないんですよ。ただ女の子からモテたい、結婚もしたい。それだけ。自分に中身がないから、女の子と接する方法はモテテクに頼ってきました。だから、それ以外の方法がわからないんです」  一般の恋愛で行われるような誠実なアタックは「コスパが悪い」と感じてしまうという。低年収というハンディキャップゆえというところはあるのかもしれないが、恋愛をコストで考えてしまうあたりは、誠実な出会いでは疎まれそうだ。

年収や役職が上がらないシビアな現実

 まだ20代の倉田さんには時間がある。しかし男性は年齢を追うにつれて、年収面がシビアに見られるようになってくるという現実がある。 「給料面では、これ以上上がっていく見込みが見えない。介護の現場に役職はほとんどなく、たまにあっても大学卒の人たちがそのポストを担っている。そう思うと20代のうちに結婚したいけど、上手くいかないものはしょうがない。ナンパとマッチングアプリに張り付くしかない」  倉田さんは「ナンパで自分に自信がついた」と語るが、今もそうなのだろうか。初めてやったパチンコが大当たりした時のように、最初は大きな達成感を得られたのかもしれないが、今の倉田さんは空疎なモテテクにすがりつき、他の方法も探せず自分をすり減らしていっているように感じる。モテテクで結婚に至る人もいるのかもしれないが、ナンパ師にもそれぞれのスペックがあり、結婚に至った人が本当にモテテクゆえに結婚できたのかどうかは分からない。  SNSやネットにはモテ商材が溢れている。しかしそれも一つのコンプレックス商材だ。結局彼は今も、これまでの「非モテ」のマインドを引きずり続けている。そのコンプレックスが彼を、上手くいかないナンパの藁にすがらせてしまっているようにも見えた。 <取材・文/ミクニシオリ>
1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携ったのち、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。
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