PCR検査もロックダウンもいち早く実施したペルーは、なぜコロナ致死率で世界最悪になってしまったのか?

 ペルーが、世界標準ともいえる徹底的な検査やロックダウンをいち早く実施したにも関わらず、致死率が世界最悪になってしまったのには以下のような事情があるとBBCが分析している。〈参照:「BBC1:貧困層が多く、在宅で「自主隔離」できる部屋がなかった  PCRテストを実施して陽性という結果が出た人は自主隔離する必要がある。ところが、ペルーは貧困層が多く、住んでいる家の11%は大部屋といったところで生活していることから自主隔離する部屋がない。ということで、一人が感染すると家族全員が感染してしまうということが容易に起きている。因みに、ペルーの貧困層は全体の28%を占めているが。地域によっては住民の50%近くが貧困者という場合もある。 2:検査をしても陽性者を監視するシステムがなかった  自主隔離ができない上に、PCRテストで感染している人を監視し追跡するシステムが未発達ということで、それだとPCRテストを実施したことが無意味となる。それがペルーで起きている。 3:都市封鎖はされたがソーシャルディスタンスが未徹底だった  封鎖期間中に買い出しに行っても周囲との距離は保たれない。店も密集している。ということから首都リマの果物市場(いちば)では86%の店員が感染するという結果が出ている。 4:貧富の格差が大きく、冷蔵庫がない家庭が21%もあった  しかも、貧困家庭では冷蔵庫がない家庭が21%ある。ということで、頻繁に買い出しに出かけねばならない。またそれが感染を容易にしている。 5:政府の支援給付を受け取る手段がない人がたくさんいた  政府はコロナによる被害を多大に受けた家庭を対象にGDPの10%を救援金として凡そ220ドルを毎月支給することにした。ところが、ペルーの住民で銀行に口座を持っている人は38%しかない。ということで大半の人が救援金を貰いに銀行に駆け付けた。そこでも十分に距離を保って列に並ぶこともない。ということから、銀行も感染の震源地となってしまったのだ。  このように、先進国では想像できないような事態が多くの貧困層を抱えた国では起きているのだ。感染症対策において、PCR検査や都市封鎖は基礎の基礎である。しかし、貧困や格差社会を放置してきた社会は、それらを無効にすらしてしまうのだ。 <文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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