山口県が安倍首相を権威として扱うのに対して、安倍首相もそれを望んでいる、ということは、首相の出身地域の区分変更を指摘した際に述べた。安倍晋三にとって、山口県――旧長州藩は特別な地域なのだ。すなわち、大日本帝国から続く権力の源泉としての。
だが、民主主義国家において、こうした権威主義体制への回顧はふさわしくない。
首相と県による殿様ごっこのために、市民の税金や公務員の労働力が多少なりとも使われてしまうのは、まさに公共の私物化といえる。
安倍首相は、「
桜を見る会」に、過去の首相たちとは比べものにならないほど大量の後援会関係者を呼んだことで知られている。背景には、下関市長選挙をめぐる権力闘争があるといわれる。前夜祭をめぐる疑惑もまだ解消してはいない。
山口県における首相権力の私物化問題は根深いが、この一件もまたそのひとつとして扱われる必要があるだろう。安倍首相の辞任によって幕引きとしてはならない。
<文/北守(藤崎剛人)>