関電問題が発覚して以降、反原発運動が各地で活発化。運転開始から40年を超える高浜原発1、2号機は今なお再稼働の見通し立たず
原発に対する逆風が吹くなか最後のチャンスを狙う地方と企業
なぜ、事件以降も高浜町は原発マネーと利権問題がくすぶるのか? 原発と地方の問題を研究する井上武史東洋大学教授は「ラストチャンスをいかに取り込むかが課題だった可能性」を指摘する。
「原発が立地する自治体は税収の3割以上を原発関連収入が占める傾向にありますが、高浜町の場合は高浜原発の立地に伴う交付金が年間30億円近くに達し、原発の固定資産税を合わせると、収入の5割以上を原発に依存しています。しかし、東日本大震災以降の逆風下で今後、原発の縮小・廃止が進む可能性が濃厚。安全対策工事の特需も生まれましたが、高浜原発はいずれも運転から35年を超えており、再稼働および運転延長しても残された期間は短い。そのため、今がラストチャンスという危機感から、限られた工事案件を地元企業で分け合っている可能性がある」
その責任の一端は国の原子力政策にあると言っていいだろう。
「電源三法交付金の趣旨は原発電力の消費地が享受する利益の一部を生産地に還元することにあるため、電気料金のなかから電源開発促進税が徴収されています。電気料金の一部が原発の新設費用に回っていたのです。しかし、新設が困難になったことで交付金の重点は運転コストにも充てられるようになりました。こうしてお金を流し続けた結果、原発立地地域は過剰な公共事業で経済を下支えする傾向が強くなってしまった」
とはいえ、原発マネーそのものは「汚いお金」ではない。求められるのは、不適切な還流を防ぐための「資金の透明化」にある。いかに原発依存体質を脱却するかという議論は、その先にある。
【井上武史氏】
東洋大学教授。敦賀市役所で電源三法交付金の実務などを担当した後、福井県立大学准教授を経て東洋大学経済学部総合政策学科教授に。著書に『
原子力発電と地域資源』など。
<撮影・取材・文/栗田シメイ>
※週刊SPA!8月25日発売号より