パチンコ業界を誘惑する、旧規制機の設置期限延長という「禁断の果実」

パチンコ・パチスロ産業21世紀会が持ち出した基準とは

 パチンコ業界内の14個の団体で構成される「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」(以下、21世紀会)という会議体がある。前述の規則改正の施行日でもある2020年5月20日、21世紀会は「旧規則機の取扱いについて」という文書を全会一致で決議した。  この決議内容を簡潔に説明するのであれば、 ①射幸性の高い遊技機は本来の設置期限をもって撤去する(1年間延長は無し) ②比較的射幸性の低い遊技機は本来の設置期限より7カ月以内に撤去する ③それ以外の遊技機のうち、2020年5月20日~2020年12月31日が設置期限のものは年内に、2021年1月1日以降に設置期限を迎えるものは2021年11月30日までに撤去する。  というもの。  そしてこの内容の遵守徹底のため、日本全国すべてのホールに「誓約書」の提出を求めた。

業界のダブルスタンダードを示すサラ番問題とは

 パチンコ業界内部の複雑な話なので、業界外の人にはとても分かりにくい話になっているが、ここまでの話を要約すると、  警察は遊技機の設置期限を1年間延長しているのに対し、パチンコ業界側は(一部遊技機を除き)最大7カ月間の延長に留めている。更には、高射幸性遊技機については、1日たりともその設置期限の延長を認めていない。  法律では1年間の猶予があるものの、業界側の取り決めはそれよりも厳しいものだ。このダブルスタンダードな決め事が、俗にいう「サラ番問題」に繋がる。  「サラ番」とは、「押忍!サラリーマン番長 俺に日本は狭すぎるA9」(通称:サラ番)という型式名のパチスロ遊技機であり、パチンコ業界はこのパチスロ機をかねてから「高射幸性遊技機」に指定している。遊技機の設置期限は都道府県公安委員会の許可日により若干ずれるが、例えば東京都内のパチンコ店であれば、同遊技機の最終設置期限は2020年8月10日である。  21世紀会の決議に沿えば、高射幸性遊技機である同機は本来の設置期限である8月10日にすべて撤去されなくてはいけない。そして東京都のほとんどのパチンコ店から同機は消えた。しかし一部のパチンコ店では撤去されず、11日以降も今までと同様に設置されたまま稼働している。  これが「サラ番問題」だ。  遊技機に関する規則(法律)に沿うのであれば、すべての遊技機の設置期限が1年間延長されたので、8月11日以降に営業していても何ら問題はない。しかし21世紀会決議と日本全国のパチンコ店が既に提出している誓約書に従うのであれば「違反」となる。
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警察とパチンコ業界、どちらに理があるのか
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