鶴田:それと、私は
日本の性教育が遅れている原因として“人権意識の低さ”が一番問題だと思う。自分らしく幸せに生きるより、『女性はこうあるべき』っていう同調圧力が先進国の中でも強い。
シオリーヌ:そうだね。アフターピルも海外では薬局で買えるのはもちろんのこと、無料だったりするのに、日本は診察必須で2万円とかハードルがバカ高い。そこにはなんか、「日本女性たるもの、清廉潔白でおしとやかであれ」っていう、
男尊女卑というかなんというか、理想の女性像の押しつけがされているような……。
鶴田:わかる~。
シオリーヌ:若い世代の性行為や、女性がSEXすることに対して何らかの嫌悪感というか「ピルを簡単に手に入れさせたら、余計安易にSEXをしてしまう」とか、
偏りまくった先入観を持っている人も中にはいるのよ。
鶴田:避妊や中絶の問題で、
女性だけがやり玉に挙げられるのもおかしな話だけど。
シオリーヌ:性教育の土壌が育っていない背景に、人権意識の低さが加わって、より性教育の遅れに拍車がかかっているのかな。
鶴田:こうやって性教育不足の話になると女性の生きづらさに話が行きがちだけど、
男性も「男たるものこうあるべき!」っていう、勝手な“らしさ”の押しつけに困っている人は絶対いると思う。
シオリーヌ:男はみんな風俗が大好きで、いい女をスマートに口説けてなんぼ!みたいな価値観ね。
鶴田:そう。だから性教育の不足は、
性別問わず“生きづらさ”に繋がってしまう。大切なのは自分で自分の人生を決められること。
何をよしとするのも個人の自由だし、それを他者に強要しちゃダメ。
シオリーヌ:そういう意味では、来春からの中学教科書に、性的少数派であるセクシュアルマイノリティ(LGBTなど)の
“性の多様性”についての記述が増えるのはいい傾向だと思う。
鶴田:制服をズボンかスカートか自分で選べたり、男女別だけじゃなく誰でも使える「みんなのトイレ」をつくった小学校もあるよね。これから変わる第一歩かもしれないけど、学校によっては積極的なところが増えてすごくいいなって。
鶴田:「らしさ」を一方的に人に強いるより、まず自分が自分らしく生きられることがすごく大切で。だから子供たちが自分で人生を決められるように、きちんとした知識とできる限りの選択肢を与えてあげることが大切なのかなって。
シオリーヌ:伝え方がわからないときは、私たちの性に関するコンテンツを使ってほしいな。
鶴田:子供以外にも、大人が改めて性教育を勉強するのもいいかも。
シオリーヌ:賛成! 実は結構知らないことだらけかも……?
正しい性教育を学ぶのに年は関係ない。自分らしく楽しく生きることができたら最高。性教育の発展は、他人事ではない問題なのだ。
【シオリーヌ氏】
性教育YouTuber、助産師。「性をもっと気軽にオープンに」をテーマに、性にまつわる知識を明るくテンポよく学べる動画を配信中。若者を中心に、登録者数は12万人超え。
ピルや自慰行為など、子供が誰かに聞きにくい話も動画で学べる。悩み相談や質問回答ライブも人気
【鶴田七瀬氏】
性教育トイレットペーパー開発者。ソウレッジ代表。誰もが安心して知ることができる性教育メディアとして、性教育トイレットペーパーを提供。人目を気にせずじっくりと学ぶことができる。
子供たちが性暴力の加害者、被害者にならないための知識や、性に関して困ったときの行動のヒントをトイレットペーパーで伝える
<取材・文/青山ゆか 撮影/杉原洋平>
※週刊SPA!8月18日発売号より