「クソリプ防止機能」はデマや詐欺を助長する?求められるユーザーのリテラシーとモラル

デマや詐欺を助長するおそれ

 現状のTwitterでは、明らかなデマを含むツイートや詐欺をたくらむようなツイートが拡散された場合、リプライを飛ばして異を唱えることができる。  本人が悪意なくツイートをしていた場合は、発言者が当該のつぶやきを削除する手助けになる。また、本人が悪意をもっており、削除するつもりがない場合でも、つぶやきに対するリプライ数や内容がツリー状に表示されるため、それを見た第三者が情報の正誤を判断する手助けになっている。  しかし、リプライ制限を導入した場合はこの「悪意ある発信者」のツイートに対する情報付加が困難になるだろう。  そもそも、悪意をもってデマや詐欺情報を拡散している時点で、自分にとって都合の悪いリプライを締め出そうとするのが道理だ。これまでも訂正や批判のツイートはアカウントごとにブロックすれば対応できたが、大量のリプライが送られればそれを一つ一つブロックしていくのは相当な時間と手間ががかる。この間に、正しい情報に触れることもできた。  一方、リプライ制限があれば自分に対するリプライを完全にシャットアウトできるため、悪意ある発信者にとっては願ってもない機能だろう。手間も時間もかからず「安全」に都合のいい情報を拡散でき、それが訂正される可能性は低くなっていくからだ。

「引用リツイート」で懸念点を解消できるという意見もあるが…

 ただし、ここまで見てきた懸念に対して「引用リツイートで批判を加えることができるではないか」という反論もある。引用リツイートとは、当該のツイートの引用部にプラスして自分のつぶやきを掲載して発信することで、確かにツイートへの批判には効果的だ。リプライと同様、発信者に対しても基本的に通知は届くので、異論を目にすることにはなる。  それでも、引用リツイートはリプライに比べて「自分に対して意見が述べられている実感」が乏しくなりやすいと感じる。リプライは相手のアカウントにメンションしていて直接疑問を投げかけていると感じやすいのに対し、引用リツイートはあくまでツイートの中身に言及するにとどまる印象があるからだ。良くも悪くも、リプライのほうが相手の心理に影響を与えやすいだろう。  また、ツイートを見た第三者にとっては、引用リツイートを確認するまでに少し手間がかかってしまう。  Twitterでは、タイムライン上でつぶやきに関する「リプライ数」「リツイート数」「いいね数」を数字で直感的に確認できる。リプライ数に関しては一目見るだけでわかり、さらに当該のつぶやきを一度選択すれば、あとは画面上に自動でリプライの内容が表示される。以上のように、リプライに関してはそれほど意識しなくても目に入るようになっていた。  一方、引用リツイートに関しては少し事情が異なる。タイムライン上に表示されるのは「リツイート数」であり、この中にはとくにコメントをつけず通常のリツイートをしただけの数も含まれる。つまり、パッと見ただけでは何件の引用リツイートがあるのか分からないのだ。  加えて、引用リツイートを見るにも、当該のつぶやきを選択したのち、「(リツイート数)リツイートと引用リツイート」というリンクを選択しなければならず、リプライに比べると閲覧に手間がかかる。  Twitterは流し見することが多いSNSで、どこまでの人がしっかりと引用リツイートを確認するかは未知数だ。加えて、デマや詐欺に騙されやすい人は情報リテラシーが低い傾向にあり、手順が多くなればそれだけで情報の確認を怠ってしまうかもしれない。第三者的な視点で考えたとき、現状では引用リツイートがリプライ制限の懸念点をすべて解決してくれるとは思えないのだ。  ただ、引用リツイートをめぐる機能はTwitterも改善を繰り返しており、昨今は以前に比べて大幅に見つけやすくなっている。そもそもSNSだけでファクトチェックを完結させることが無理難題ではあるのだが、UIの面からもこの部分のさらなる改善が望ましい。
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「クソリプ防止機能」は抜本的な解決にはならない
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