300年もの領土問題を抱える「欧州最後の植民地」のジレンマ

イギリス側は「スペインからの帰国者への自主隔離」で報復⁉︎

 彼女の外相としての外交には今回の出来事以外にも批判が生まれている。彼女はもともとEU本部の商業関係に属していた6か国語をしゃべる高官であった。しかし、こと外交となると、彼女は素人だ。スペイン外交がどうあるべきかという明確な考えも持っていない。また対EUについても戦略に欠けるとして外務省内でもよい評価はされていない。  ラヤ外相の外交は同じサンチェス政権での前首相だったジュセップ・ボレイルの外交手腕とは大きくかけ離れたものだ。なお、ボレイルは現在EUの外交トップの外務・安全保障上級代表に就任している。この外相の交代には、サンチェス首相が自ら外交を担いたくボレイルを外して外交では素人のゴンサレス・ラヤを外相に起用したのだという憶測もある。  一方、英国の方では今回のピカルド首相がスペイン外相と会談を持ったということに明確な表明はしていない。しかし、その会談の二日後に英国政府はスペインからの帰国者には2週間の自主隔離を義務づけたという出来事があった。この決定は、両者が英国政府の代表を加えることなく会談をもったことへのボリス・ジョンソン首相の否定的反応かもしれない。 <文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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