大病院すら苦しむ一方で、精神科病院と美容皮膚科には思わぬニーズが
新型コロナ感染拡大による医療機関の減収が報じられる一方で、増収となった病院や診療科もあったようだ。
「確かに耳鼻科や眼科など外来収入のみの医療機関は、コロナ禍での受診控えで経営は相当、苦しいはず。7割減という話も聞きますね。一方、病床がある医院では、繁盛するケースもあるんです」
そう明かすのは、東海地方で精神科病院を経営する中里幸二さん(仮名・45歳)。300近い病床を有する中規模病院を運営している。
「3月末に新型コロナ対策として、県内の大学病院が一般病床をコロナ感染者専用に作り替えました。すでにその病院に入院していた精神科の患者さんをトコロテン式にウチの病院が受け入れることになったんです」
転院患者を積極的に受け入れた結果、ほぼ満床に。3~5月の医療利益は、2割の増収となった。
「地域全体の病床の確保は最優先課題なので他の病院との助け合いが功を奏した。しかし閉鎖的な土地柄、一人でも感染者を出したら周囲からどう言われるか……まったく気が抜けませんね」
またコロナ禍で思わぬ恩恵を受けたのが美容皮膚科だ。都内のクリニックに勤務する准看護師の水田礼子さん(仮名・40歳)が話す。
「4、5月に急増したのがレーザーのシミ取り施術です。皆、『どうせマスクで見えないから、施術後の肌の腫れや赤みが出ても気にならない』と言っています。前年に比べ3割ほど予約が増えました」
とはいえ“お客”が増えたのに水田さんの胸中は複雑だという。
「院内の感染対策は徹底していますが、施術中、患者さんはマスクを外すし、肌の状態を確認するので“密”にならざるを得ない。また前日にはキャンセル料が発生するため、熱があっても来院する患者さんもいます。施術は高額なので、気持ちはわかるのですが……」
決して手放しでは喜べない、医療関係者の本音があった。
休業要請の対象外だった美容皮膚科、業界内でも「不要ではないが不急では」と賛否が分かれた。「感染は怖いが、来ないでとは言えませんよね」(水田さん)
<取材・文/週刊SPA!編集部>