新型コロナウイルス禍の社会において〝感染予防〟との名目の下、様々な局面で行われていた次亜塩素酸水を始めとする消毒液の空間噴霧。安全性と有効性への懸念から取りやめるところが増える一方、大手外食チェーンレストランでは、ある〝除菌液〟が噴霧されていた。 　筆者は6月中旬、都内ですかいらーく系列のレストランを利用した。案内されたテーブルの近くには「次亜塩素酸不使用」「天然由来の原料」「希釈率10倍」とのシールが貼られた超音波式加湿器から大量のミストが噴霧されており、ホールの従業員にミストの成分を尋ねたところ、厨房から出てきた店舗責任者が口にしたのは「アピノンエアー」なる商品名だった。 　調べてみると今年4月以降、外食産業大手すかいらーくグループが「空間除菌」を行っている。新型コロナウイルス感染予防対策として、ガスト・バーミヤンなどのチェーンレストラン店内に設置された超音波加湿器から「界面活性剤と抗菌剤」を主成分とする〝除菌液〟をミスト噴霧しているのだ。 「空間除菌」といえば、4月末にニセ科学批判派の科学者がブログでその危険性を発信、SNSで拡散され効果や安全性を疑問視する声が噴出。本サイトでも連載中の牧田寛氏が記事内でも警鐘を鳴らしている。それらの動きと前後して、厚労省なども吸引時の有害性や消毒効果を否定するリリースを発表するなどして、大きな物議を呼んだテーマだ。 　SNSでは、このミスト噴霧に遭遇した多くの利用客が心配の声をツイートが見られた。利用客や従業員の健康への影響はないのか？ 　筆者が店舗責任者から聞いた「噴霧されている謎の霧」の正体は、商品名を「アピノンエアー」というらしい。 　その場でネット検索したところ、「安定化二酸化塩素」と出てきた。アピノン専門のオンラインショップではアピノンエアーについて〝自己責任〟での空間除菌を推奨していた。〈参照：アピノンAirエアー販売ページ／ABOUT｜Apinonn〉 　また、別の販売代理店のサイトに掲載されたアピノンエアーのポスターには「部屋の空気をまるごと洗浄！」とあり、「急性経口毒性試験クリア」などと安全性が強調されていた。〈参照：菌やウイルスの増殖を抑制！｜アピノンの東北エリアの代理店 有限会社伸和自動車ガラス〉 　さらに、店内での除菌ミスト噴霧に関するすかいらーくサイドの発信の経過を辿っていくと、あることに気付いた。 　すかいらーくグループを統括するすかいらーくホールディングスが今年3月18日に公開した動画『すかいらーくの「新型コロナウイルス対策」について』では、空間除菌に関する内容はない。 　しかし、すかいらーくグループのガストとジョナサンのTwitter公式アカウントは、それぞれ4月9日と11日に【定期お知らせ】として「各店に順次、入口付近に超音波加湿器を設置し、除菌成分を噴霧中です」とツイートしており、この時期から除菌液のミスト噴霧を行っていたことが判る。 　そして、この時期にすかいらーくホールディングスが公開した『すかいらーくの「新型コロナウイルス対策」について』には除菌液をミスト噴霧しているシーンがあり、「入口での除菌」「一部店舗に空間除菌を実施」とのテロップが入っている。 　しかし、6月10日から現在まで公開されている同タイトルの動画では、この箇所のみ削除されているのだ。 　また、すかいらーくグループの公式サイトに掲載された5月1日のプレスリリースには「店内空間の除菌・抗菌を行う機器を設置し、今後従業員控室にも設置」と記載があり、全店舗に除菌ミスト噴霧器が設置されたと判る。しかし、6月11日に更新されたプレスリリースでは、その文言のみが削除されている。 　公式動画や公式サイトでは〝空間除菌〟に関する映像や文言を削除したすかいらーくホールディングス。専門家による発信やSNSでの不安の声を受けて対応を変更したのだろうか？　しかし、実際の各店舗では現在も除菌液のミスト噴霧が続けられている。これは如何なる事態なのだろうか？