写真/時事通信社
新型コロナウイルスの感染が日本でも拡大し始めた頃「このタイミングで災害が来たら大変なことになる」という不安の声が各方面から聞こえて来ました。
実際、今年7月には豪雨災害が熊本を中心に襲い、今なお多くの人が避難所での生活を余儀なくされています。コロナ以降の災害対策とはどんなものなのか、緊急情報配信サービス「Spectee」を運営する株式会社Specteeの代表・村上建治郎氏にお話を伺いました。
災害時の感染症対策のノウハウを国や自治体は持っていない
コロナ禍で災害が発生した場合、避難所が「密」になってしまうことが懸念されていました。熊本では、避難所の収容人数を制限しているものの、「密」を避けるのはやはり難しいようです。これらについて、村上氏の目にはどのように映ったのでしょうか。
村上建治郎さん
――報道などで避難所の様子をご覧になった感想をお聞かせください。
消毒液の設置やソーシャルディスタンスなど、やるべきことを頑張っていらっしゃるのは見えました。ただ、これだと収容できるキャパシティは限られてきますので、もし人口の多い都市部で災害が発生した場合、避難所でソーシャルディスタンスを保つのは難しくなると思われます。
――現在はまだ、国や自治体は避難所での感染防止について、対策を取っていないのでしょうか。
5月頃のアンケートでは、避難所の備蓄品の中に食料や水はあるのですが、マスクや消毒液の備蓄があると答えたところはほとんどありませんでした。もともと想定していなかったということですね。
――では今後、どういった手段を打たなくてはいけないのでしょうか。
避難所のキャパシティが足りなくなることが想定されるので、国や自治体が、ホテルなどの民間の施設を避難所として使えるようにしていくことが必要になると思います。
コロナウイルスが流行する今、南海トラフ地震が東日本大震災の規模で発生したとすると、スペクティの試算では、避難所だけで60万人もの感染者が発生すると考えられています。あまりに大きな感染拡大の様々な原因についても、お考えを伺いました。
――災害時の方が平時以上に感染拡大する主な原因はなんですか?
やはり避難所は、衛生環境がいいとは言えないために、感染症は広がりやすくなってしまいます。そして密になってしまうということです。東日本大震災の時に、インフルエンザが広がった避難所がありました。他にもノロウイルスが拡がった例もあります。
災害が発生してすぐは、怪我などの治療が必要な方が多いのですが、時間が経つと気管支系の感染症の患者が増えてくるという研究結果もあります。
――避難中にコロナウイルスへの感染が確認された場合は、どうなるのでしょうか。
災害時は医療の助けが必要な方を怪我の程度などである程度優先順位を付けて治療が行われますが、それは主に怪我などの話なので、そこにコロナのような感染症が入ってくるとは現時点では想定されていないと思いますね。
――感染拡大を防ぐために対策すると、避難にどんな支障が出ますか?
内閣府は、南海トラフ地震が発生した時に、約460万人が避難することになると発表しているんですが、それに基づいて計算をしてみると、ひとつの避難所で200人程度の避難者を受け入れなくてはいけないことになります。この人数でソーシャルディスタンスを取るのは難しい状況です。
――その場合、密に目をつぶって避難者を詰め込むのでしょうか?それとも避難所に拒否されるのでしょうか?
現時点では、密を作るわけにはいかないので、定員を超えた避難所では拒否されてしまうことがあると思います。また、溢れてしまった人をどうするかというガイドラインは、現時点ではどの自治体にもないと思われます。