新型コロナで大打撃。五輪開催も先行き見えぬ中、観光業界が「それでもインバウンド」に希望を託さざるを得ない理由

99.9%減と壊滅状態のインバウンド。回復の見通しもなし

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観光局によるとコロナ禍前と比べ訪日観光客はほぼ100%減。受けた傷は深い

 新型コロナウイルスで壊滅的な打撃を受けているのがインバウンド産業である。観光庁が発表したデータによると、2019年の外国人延べ宿泊者数は1億1566万人泊で、前年から22.7%増え、初めて1億人泊の大台を超えた。このとおり昨年までは絶好調であり、2020年は東京オリンピック開催もあり、この記録を超えるだろうと思われていたが、コロナ禍により霧散してしまった。 「観光業界は非常に厳しい状況です。特にインバウンドは99.9%減が続いていますし、回復の見通しも立っていません」
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出典:日本政府観光局

 このように話すのは、インバウンドツーリズムに特化した事業を展開する、株式会社やまとごころ代表取締役の村山慶輔氏である。 「インバウンドは、ゼロの状況がしばらく続くと思います。国内では旅行代金が最大半額支援される『GoToキャンペーン』が感染拡大中の東京都を除き始まりましたが、1.7兆円という予算が国内観光に使われるのは前例がなく、かつてない浮揚対策になると期待しています。GoToキャンペーンは宿泊費だけではなく、飲食やお土産のクーポンなども利用されるなど観光業の裾野の広さに合わせた施策なので、影響が大きいのではないでしょうか」  しかし、新型コロナの感染者数は収束せず、国内では県をまたいで人が行き来するのは怖いという声もある。 「観光地としては旅行者に来てほしい反面、感染も怖い。業者としても地元の周辺住民の方々の声を気にせざるを得ないというジレンマがありますから、そのバランスをどう取っていくのが課題になると思います」

観光業界生き残りに策はありや?

 観光業界が生き残るためにはどんな施策が考えられるのか。 「インバウンドが回復するにしても秋口からと思われますし、年内は期待できないので国内観光に絞る必要が出てきます。その上で、他県も跨げないという状況だと、地元を中心とした小さな範囲を観光する、いわゆる『マイクロツーリズム』といわれるスタイルに可能性があると思います。GoToキャンペーンだけでなく、各都道府県の自治体が中心となり、同一県内で旅行や宿泊をする方に経費の半額を補助するなどの施策が行われています。この制度を利用して、地元の観光地を改めて回ったり、普段はなかなか泊まることのない家の近くのホテルに宿泊や食事をしてもらい、地元の良さを再認識していただくということになるでしょう」  これは、やがてインバウンドが復活したときに、地元の観光資源やホテルを紹介するいわゆる「おもてなし」活動にも役立つだろうと村山氏は指摘する。  だからこそ、東京五輪の開催はインバウンド業界にとって大きなターニングポイントになるが……。
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観光業者の7割が前向き。五輪中止も想定済み
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