リニア計画「推進」の吉村洋文・大阪府知事と「見直し」の川勝平太・静岡県知事との違いは?

川勝知事との話し合いで“コロナ前の話”しかしなかった自民党

リモートで参加した川勝知事

7月23日の「自民党リニア特別委員会」(古屋圭司委員長)にリモートで参加した川勝知事

 コロナ後においても「リニア推進」の姿勢を変えない吉村知事と対照的なのが、リニアをめぐってJR東海や国交省、自民党らと渡りあっている川勝平太・静岡県知事だ。トンネル工事による水枯れ(大井川の水量低下)を懸念して、県内での工事着工を認めていない。  川勝知事は7月22日の「自民党リニア特別委員会」(古屋圭司委員長)に県庁知事室からリモート参加。冒頭で「(自分は)大推進論者」と切り出す一方で、水問題については譲らなかった。そして終了後の会見で質問すると、次のように述べた。  ――(国交省有識者会議で明らかになった新たな問題の)地下水が最大で300m以上低下するおそれがあるという話は出たのでしょうか。(川勝知事の)推進論というのはコロナ前の話だと思いますが、コロナ禍においては採算性や必要性、収益性などを含めて再検討するのが、国家プロジェクトを検証する国会議員の役目でもあるし、周辺知事の役割とも思いますが、その点はいかがでしょうか。 川勝知事:いい質問ですね。まず最大300m、上流部で地下水位が下がることはこの間の(4回目の)有識者会議で出た資料ですね。これについてはどなたも言及されなかったし、その話は出ませんでした。  今回は(会議参加者の発言が)1人5分で、これまで取り組んできたリニア推進のさまざまなプロジェクト、用地買収がうまくいっているのか、そういうレベルの話です。いまおっしゃったような“コロナ前の議論”に終始したのです。  しかし、今そういう議論が起こってきています。安倍首相ご自身がオンライン、リモートを推進すると。国家的なプロジェクトとして推進するとおっしゃっているので当然、その議論は出てこないといけません。今回はそれぞれの現状を、これまでの歴史を簡潔にまとめることが求められたので、その話まではいきませんでした。

「リニアは本当に必要なのか、採算がとれるのか?」との疑問

地下水位低下の図=有識者委員会の資料

地下水位低下の図。最大で300m以上低下するおそれがあると指摘されている(有識者委員会の資料より)

「この日のリニア特別委はコロナ前の総括にすぎず、コロナ後の見直しの議論は当然進めるべき」という考えを川勝知事は明らかにした。それと同時に、7月15日の有識者会議で新たに浮上した南アルプス国立公園内での「地下水が最大で300m以上低下する」という懸念について「誰も触れなかった」と指摘、自民党が建設推進ありきで環境への配慮に欠いていることを告発する形となった。  川勝知事がリニア工事の見直しについて言及したのはこの時が初めてではない。6月26日のJR東海社長との面談後に行われた囲み取材でも、同じ考えを述べていた。 ――コロナ禍でリニアが必要なのか、採算がとれるのかについては、国民の理解が必要だという考えなのでしょうか? 川勝知事:そうですね。今回、コロナウィルスが蔓延して、新幹線の利用者が激減。リニアは連動していますから、コロナ時代に必要かどうかは、識者の中でも疑問を呈されています。本当はそういうことを考えないといけない。  有識者の考えによると「リニアが本当に必要かどうか見直せ」と言っています。しかも6月18日の安倍総理の会見では「オンラインを思い切り推進するのだ」とおっしゃっているわけです。  東京や大阪に行って仕事をするのではなくて、(リモートワークが)きっちりとできれば、家にいながら仕事ができることになる。コロナ以前の「速く、効率的に」というのが成り立つのかどうか。 (リニアは)電力も食います。ものすごい電力(消費)量は環境の21世紀にふさわしいものなのか。原発の電力で(リニアを)動かすというビジネスモデルが成り立たなくなる。それではどうするのか、と考える時期ではないかと思っています。膨大なお金と人力を投入して作った成果が、本当に日本のためになるのかどうかが問われています。
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コロナ後を視野に入れる「見直し派」vs.コロナ前のままの「推進派」
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