東欧でマスク生産に乗り出した日系企業。困難を乗り越えポーランド政府に納入
不良品や配布の遅延が相次いだアベノマスク。追加で8000万枚の配布が決定したが、「またあの低品質のガーゼマスクを税金かけて配るのか」と批判の声があがっている。そんな中、同じくコロナウイルスに苦しんでいる欧州では、とある日系企業が高規格マスクの生産に乗り出すこととなった。
ご存知のとおり、主な市販品や日本政府が配布した布マスクは、基本的に他者への感染を防ぐために利用されている。ところが今回、東欧ポーランドに拠点を置く創美ポーランドが生産を始めるマスクは、ろ過率95%以上と非常に高品質なもの。つまり、他者への感染を防ぐだけでなく、「自衛」のために役立つのだ。
しかし、以前にも当サイトで紹介したとおり、同社の主な業務内容は自動車部品などの製造だ。高規格のマスクとは程遠いようにも思えるが……。同社取締役の浅野慶一郎氏に話を聞いた。
「コロナウイルスの感染拡大を受けて、我々も一時は仕事が半分以下までに激減しました。そんななか、新たに何かできることはないかと、弊社のなかで見直したことがマスク作りに着手したキッカケです。在ポーランドの日本大使館に問い合わせて、ベッドや医療器具、人工呼吸器の製造など、役に立てることはないかと尋ねたところ、『マスクが一番困っている』と」
医療器具や人工呼吸器ならば、同社が得意とする精密な金属部品などが使えそうなものだが、そのノウハウはマスクにも活きるのだろうか?
「製品には全く活かせません(笑)。ただ、製造工程の分析・形成など、ものづくりの本質は一緒です。どういう理論で、どんな構造で設備が稼働しているのか、という部分ですね。実は今、そういった専門的な動画がYouTubeなどにアップされていて、それらを観て勉強しつつ、専門業者にコンタクトをとって、詳細をヒアリングしました。すると、製造するための機械自体はそんなに難しいものでなく、アイデアが出てから一週間程度で『マスクは作れそうだ』となったんです」
こうして、わずか一週間でポーランド政府との話がまとまり大成功……となればよかったのだが、そのあとには想像を絶する困難が待ち受けていた。
「マスク需要の高騰で、主な原材料である不織布(繊維を折らずに組み合わせたもの)が手に入らなかったんです。欧州各国からパキスタン、インド、中国、日本……。50社以上あたりました。しかし、ようやく見つかったと思うと、送られたサンプルは不織布じゃなかったりしたんです。そうこうしているうちに6月になってしまい、それまでの調査報告書をまとめてマスク作りは断念しようと思っていました。その旨を関係者とポーランド政府にも連絡したところ、『ここまできたら頑張ってみてほしい。僕らも手伝います』という返事がきたんです。政府の口利きで何社かあたったところ、ようやく不織布が手に入りました」
藁にもすがる思いで卸元を探し続けたところ、最終的に見つかったのはドイツ企業。当初は「製造するためのキャパシティがない」と渋い答えが返ってきたが、ポーランド政府の後押しもあり、なんとか無事に話がまとまった。
マスク作りの知識ゼロからのスタート
原材料の確保に奔走
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