写真/産経新聞社
東京では感染者急増も医療機関の支援よりGoToを優先する安倍政権
「幻のオリンピック連休」となった4日間の大型連休。新型コロナウイルスの「第2波」襲来が懸念されるなか、ぐずついた天候も手伝ってか、東京・銀座は終始、人影もまばらだった……。
7月25日、東京都内では295人の新型コロナウイルス感染者が新たに確認され、5日連続で200人を上回った。100人超えはこれで17日間連続。都内の入院者数は前日の24日に1040人となり、1000人の大台を突破したが、これを受けて東京都はコロナ患者向けの病床を1500床確保し、今後、4000床に増やす方針を明らかにした。
「1年後、オリンピックやパラリンピックができる世界になっていたら、どんなに素敵だろうと思います」
来年開催予定の東京五輪・パラリンピックのちょうど1年前となった23日には、白血病からの復帰を目指している競泳女子の池江璃花子(20)が、新国立競技場に登場。世界が一丸となってコロナ禍に立ち向かおうという希望のスピーチを披露したばかりだった。
東京都では28日時点、人工呼吸器などが必要でICU(集中治療室)に入院している重症者は21人。もっとも感染が拡大していた4月末には100人を超えていたため、比較的抑えられているようにも見える。
菅義偉官房長官も、都の医療提供体制は「ひっ迫している状況にはない」との見解を示しているが、東京都のモニタリング会議で、杏林大学医学部の山口芳裕主任教授は
「政府の説明は誤り」であり、「
2週間先を見越して評価する必要がある」と厳しく反論。医療現場では、22日に「Go To トラベル」キャンペーン解禁をゴリ押しした政府に対する不信感が募っているという……。
医療法人社団鉄医会理事長で、ナビタスクリニックの医師・久住英二氏が話す。
「そもそも、現状では
第1波のコロナ患者を受け入れた病院のほとんどが、赤字に陥っています。コロナ患者をICUに収容すれば、
通常の肺炎患者の6倍のマンパワーが必要。また感染予防のために担当の医師や看護師は一般病棟とのかけ持ちが難しくて人手が割かれる。たとえ軽症でもコロナ患者は退院まで時間がかかるのに、医療行為が少ないため報酬は低い。コロナ患者は受け入れるほど、病院経営は悪化します。医療スタッフは第1波で疲弊しているうえ、ボーナスももらえず、現場を去る人もいる……。
第2波に備えて病床だけ増やしても、医療体制や人員を確保できなければ何の意味もないのです」
医療崩壊を招くのは「PCR検査増」ではなく政府の無策
事実、コロナ患者を受け入れていた東京女子医大では経営難に拍車がかかり、ボーナスカットに憤った看護師400人の一斉退職が噂された。
医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏も、コロナ患者を受け入れる病院が直面する厳しさを指摘する。
「第2波の到来で新宿区や港区など東京の真ん中に位置する総合病院は相次いで倒産するかもしれません。診療報酬は全国一律で、近年は医療費を抑制するため報酬も上がっておらず、病院はせいぜい3、4か月の運転資金しかない。そもそも総合病院はがんセンターなどの専門病院に比べ、概して財務状況がよくないので、コロナ患者の受け入れを長期間続けるのは難しい。
第2波が長引けば、感染者を受け入れるのは公立病院だけになり、“入院難民”が激増する恐れが東京にはあります」