El Violador En Tu Caminoで訴えられるメッセージはチリの女性だけにとどまらない。その動きは世界へと拡大。日本でもパフォーマンスが行われた。 photo by Kentaro Kajitani
El Violador En Tu Caminoは、世界中に発表されると同時に、その歌詞は何度も翻訳されました。
動画を見るとわかるように、目隠しやスクワットのような仕草、歌詞が印象に残ります。これらのパフォーマンスの裏に込められた意味とはなんなのでしょうか。
このLas Tesisのパフォーマンスや歌の歌詞は、まず性暴力の被害に遭ったサバイバーに対して「服が派手だから…」とか、「遅くにそんなところに…」などと責める行動に対して「El Violador Eres Tu (加害者は貴方だった)」「 Y la culpa no era mía, ni donde estaba, ni cómo vestía(そして、何を着てようが、どこにいようが、私のせいではない)」と訴えている歌詞なのです。
そしてその歌詞と一緒に行われるスクワット。それはどういう意味が込められているのでしょうか?
2019年の10月中旬から始まったデモでは、警察により何千人ものチリ人が警察により逮捕されました。ただ、逮捕に留まらず国内人権委員会何度も警察の不当な逮捕や暴行について声を上げています。その中で多くの女性が訴えたのは警察による性暴力でした。
目隠しをされた状態で、留置所に連れてかれるパトカーやバンの中で数名の男性警察官による性的暴行。留置所や人目のつかないところでのレイプ。そして捕まる時に全裸の状態でさせられるスクワット(肛門などにドラッグなどを持っていないか確認される)……。時にはスクワットをする状態に男性警察官に性器を触られる証言も出てくるほどでした。
Las Tesisが訴えられる?
ところが、ここに来てそんなLas Tesisが警察によって訴えられてしまいました。それはLas TesisとRiotが一緒に作り上げた、「Manifesto Against Police Violence(警察の暴力に対するマニフェスト)」の歌詞の一部や、デモが行われていたときのLas Tesisによる暴力を口実としてのものでした。
タイトル通り、このビデオは警察の様々な暴力を告発しており、「警察は私達を追い、家に押し寄せて、挑発し、デモ隊の一部になりすまし、全てを燃やし始める。街を武装して歩き、私達の上空を飛び回り、ガスを投げる。暴力、拷問、性暴行、迫害、そして全盲にされる」と述べてます。その歌詞の一部で「Fuego A Los Pacos, Fuego A La Yuta(警察に火を)」と言うくだりがあるのですが、チリの警察がこれを「警察や権力に対する脅迫だ」と主張しているのです。
それ以外にも、警察に対する市民からの暴力も、Las Tesisが挑発したものだと警察は主張しており、その責任を追うべきだと6月12日に届出を出したといいます。
現在はLas Tesisを擁護する専門家、教授、クリエーターなどが声を上げており、これは「フェミニストのマニフェストに対する迫害だ」と述べています。
Las Tesis自身も声明文で、警察の行動について「自由の迫害」と述べており、「独裁者政権から変わっていない」「家父長制社会の象徴」と批判をしています。
この件について、世界的なビッグネームもLes Tesisへのサポートを表明し始めています。次回はそのことについて書こうと思います。
<文/山本和奈 写真/Kentaro Kajitani>