コロナ禍で紛糾する「最低賃金」の引上げ。全労連は1500円の実現求める

最低賃金の引上げ、地域間格差の解消を求める動き

職業 2020年度の最低賃金の目安を決定する厚生労働省の最低賃金審議会の小委員会が20日に開催された。新型コロナ禍の中、今年は例年になく労使双方の意見が衝突し、決着がついていない。  一日で結論がつかず、4連休を目前に控えた22日にまで議論が持ち越しとなったが、22日午後5時現在、未だ議論は紛糾しているようだ。  最低賃金は過去4年連続で年3%ずつ引き上げられ、昨年には東京都で1013円と、四桁の大台に乗っている。一方で、東北、九州などを中心にした15県では790円であり、223円の開きが東京都との間にある。  こういった状況の中、与党の自民党も最低賃金の引き上げに積極的で、昨年6月、党の政務調査会・雇用問題調査会は、「2020年代のうちにすべての都道府県における最低賃金を1000円にすべき」といった「緊急提言」を行い、今年6月12日にも開催された全労連主催の学習会において、党最賃議連の務台(むたい)俊介衆院議員が、イギリスがコロナ禍のなか最低賃金を6.2%引上げたことに関連し、「イギリスと同じように引上げ」「全国一律を目指さないとならない」といった趣旨の発言を行なっている。  他の政党を見ても、立憲民主党は「全国一律1300円」を要求、国民民主党が昨年の参院選で「地域間格差解消と1500円実現」に合意、共産党、社会民主党、れいわ新撰組は全国一律で1500円を要求している。  最低賃金の全国一律化については、日弁連も今年2月に意見書を発表、最低賃金の高い都道府県のそれを引下げることなく、全国での一律化を求めている。

中小企業は引上げに抵抗

 一方で、経営側は最低賃金の引上げに対してはこれらの声とは反対の態度をとる。今年4月16日に日本商工会議所、東京商工会議所などは、中小企業の不満と不安を背景に、「中小企業は、企業数の99%、雇用の約7割を占めるなど、わが国の経済活力の源泉であり、地域経済を支える礎」「最低賃金は中小企業の経営実態を十分に考慮することにより、明確な根拠のもとで納得感のある水準を決定すべきである」とのことから、「引き上げ凍結も視野に」との要望を出している。  最低賃金の全国一律化についても、「地方では、雇用の担い手である中小企業が経営不振に陥り、労働者は仕事を求めて都市部へ移動することが予見される」「人件費が高まる地方への投資を避ける一方で、インフラが整い市場規模が大きく効率的に生産や販売活動をすることができる都市部や、人件費が安い海外への立地や投資を加速することが想定される」といった理由で反対している。
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生計費の試算に基づいた「全国一律1500円」の要求
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