微表情分析でわかる、参院における児玉龍彦氏の答弁と西村厚労相の感情の温度差

児玉教授と西村大臣の想いを推測する

 次にこの部分について表情分析を手動のマニュアル分析に切り替え、精査します。  01:57の児玉教授の表情を分析すると、眉が引き上げられ、眉間にしわが寄せられていることがわかります。  この動きにより、額に波状のしわが生じているのがわかります。これは恐怖を示す表情です。  「懸念している」という言葉と恐怖表情とが一致しており、この発言に強い恐怖感情が込められていることが推測されます。この部分以外の発言時においても、児玉教授は恐怖表情を浮かべることが多々あり、現状の対策を不安視している様子が読みれます。  次に、今後のコロナ対策について返答している西村大臣の表情を分析します。03:24くらいから、「疫学的なことに様々な議論があることも承知しているし、いろんな提案を頂いている」と発言しています。  このとき、眉が引き上げられています。この動きにより額に水平のしわが生じているのがわかります。これは、驚き・興味・関心を示す表情です。疫学的なことにも関心を抱いているということが現れているのだと思われます。 ※2 本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。  

感情の温度差がもたらす行動の差

 児玉教授と西村大臣の感情から行動を推測します。感情は行動の引き金であり、感情が異なれば、その帰結としての行動も異なる可能性が高いと言えます。  児玉教授の恐怖感情は、安全・安心に向かう行動へとつながります。深刻な事態に向かいつつある現状を安全な状況にすべく、国に行動を強く求めているのだと思われます。西村大臣の驚き・興味・関心感情は、情報検索に向かいます。疫学的な情報をさらに求めているのだと思われます。  児玉教授の抱く事の重大性が、西村大臣に伝わっていないのか、あるいは西村大臣は、疫学的な懸念と同程度の、想像するに、経済的な懸念を抱いており、児玉教授が提案する対策を打ち出すにはさらなる情報が必要だと考えているのかも知れません。  両者が各々に抱く価値基準や対立する問題を率直に話し合い、解決策に向けた落としどころを早急に見つけられることを願っております。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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