持続化給付金詐欺の深すぎる闇。悪徳税理士・行政書士がセミナーで不正受給指南も

 新型コロナの影響によって休業を余儀なくされたり、売り上げが激減し、窮地に立たされている個人事業主や中小企業は少なくない。その救済策として導入された持続化給付金だが、“制度の甘さ”をつき不正が横行している。その実情に迫った。

渋谷の貸会議室で催された給付金の受給セミナーに潜入

「みなさんが申請できる給付金や補助金は持続化給付金だけではない。3000種類もあるんです。先ほどもセミナーに参加した方から『総額850万円を獲得しました!』と連絡が入ったばかりです」
悪徳セミナー

※写真はイメージです
aijiro / PIXTA(ピクスタ)

 渋谷駅近くの貸会議室。20人ほどの聴講者を前に、分厚い金時計をつけた角刈りの男は、そう畳みかけた。フェイスブックで広告掲載されていた「会社員や主婦も申請可能!」と謳う「新型コロナ関連給付金・補助金勉強会」に記者が潜入した際の一幕だ。  会場では税理士や行政書士、社会保険労務士などが出演するビデオが流された。そこで彼らは「会社員や無職でもやり方次第で高額受給できます」と息巻く。  その後、聴講者は一人ずつ別室に呼ばれ、3人のスタッフに「わが社のサービスなら、士業の先生方に相談し放題で50万円!」とその場での契約を迫られた。  セミナー後に調べると、ビデオに出演していた人物のうち、税理士と行政書士については実在することが判明。両者の事務所に電話すると、セミナーの主催団体との関係を認めたうえで「違法なことは何一つしていない」と主張した。

悪徳士業が不正受給指南

 持続化給付金の対象は、中小法人もしくは個人事業主だ。申請には、税務署に申告済みの前年の確定申告書の控え(税務署の収受印付き)の提出が求められ、事業性のある収入(事業収入および雑収入、業務委託としての給与収入)があることが確認される。前年の事業性収入の合計(年間売り上げ)から、基準月(前年同月比で売り上げが半減以下となった任意の月)に12をかけた数字を引いたものが、給付額となる(上限は法人200万円、個人事業主100万円)。 持続化給付金詐欺の深すぎる闇 こうした原則をかいくぐり、会社員や主婦に対して不正受給をサポートする悪質業者が増えている。「行政書士の指南で持続化給付金を受給した」と明かすのは、都内在住の会社員だ。 「SNSで見た『会社員でも給付金ゲット』という投稿に連絡すると『ある会社からあなたに昨年100万円のコンサルフィーを支払ったことにするので、事業収入として確定申告してください。100万円分の経費も同時に計上すれば納税額は増えない。確定申告書の控えさえ送ってもらえば、あとはこっちでやります』と指南された。先方は行政書士を名乗り、事務所もあったので、信用して30万円を振り込むと、3週間後に無事100万円が振り込まれた」  つまり、昨年度の確定申告書に架空の事業収入を計上し、今年は打撃を受けてそれがなくなった、という体にしているのだ。
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給付金をしゃぶり尽くそうとする悪徳士業
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