遺影を手にインタビュ-に臨む赤木雅子さんと、それを迎える小川彩佳さんはすでに産休に入っていたが、自らインタビュアーを買って出た。インタビュー前の懇談から和やかな雰囲気で進み、インタビューは約2時間に及んだ。
「本のことですけど、女性に読んでいただきたいです。夫が亡くなって以来、ずーっと男の世界の中で息苦しかったです」
これは6月20日、赤木雅子さん(49歳)から私に届いたLINEの言葉。森友学園への国有地の巨額値引きに関連する公文書の改ざんを上司に無理強いされ、それを苦に命を絶った財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(享年54歳)の妻だ。
赤木雅子さんは今年3月、夫、俊夫さんが遺した改ざんの経緯についての「手記」を公表するとともに、国と「改ざんを指示した」と手記で名指しされた佐川宣寿元財務省理財局長を相手に裁判を起こした。その裁判が7月15日に始まるのに合わせて、私と初の共著を上梓した。『
私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)だ。
この本の装丁を相談している時に冒頭の発言が出た。表紙に俊夫さんの直筆の遺書を載せるという案が『週刊文春』出版部から出ていた。それに対し、「手書きの遺書が載ると女性に手に取ってもらいにくくなりませんか?」という懸念だった。この懸念は、本の帯に赤木雅子さんの手書きのかわいいイラストを同時に入れるというアイディアで解消されることになる。
それはともかく、なぜ赤木雅子さんは「女性に読んでいただきたい」と思ったのか? 「男の世界の中で息苦しかった」とは、どういうことを指すのか?
私との共著『私は真実が知りたい』の帯のイラストは、赤木雅子さんの直筆
後日、私はこの件で赤木雅子さんに直接話を聞いた。すると……。
「夫が亡くなって最初に来たのが、
近畿財務局の人たちですよ。全員男性です。彼らがよってたかって、私が夫の遺した手記を公表しないように、マスコミを近づけないようにしました。それはなぜかというと、自分たちの
保身、上司に言われているからですよね。
そして弁護士さんも、前は近畿財務局の人に紹介された方で男性でした。この人も今になってみると、財務省・財務局の意向に沿うようにしていたんじゃないかなあと感じます。
それにマスコミの人たちもほとんど男の人ですよね。夫が亡くなった時、私がいた実家の周りをマスコミの人たちが取り囲んで、カメラを向けたり話を聞こうとしたりするのが、本当に怖かったんです」
はい、すみません。私も男ですね。でも、赤木雅子さんが男社会の論理に苦しめられてうんざりしているという話は、以前からことあるごとに聞いていた。
例えば4月1日。雅子さんは安倍首相が退陣に追い込まれるかもしれないという週刊誌の記事の写真を送ってきた。それに私はこう答えた。
「安倍さんが辞めれば、後任の首相は自民党であっても大喜びで綿密に調査してすべてを公表するでしょう。そうなれば真相がようやくわかります。佐川さんも池田さんも話せるようになり、彼らも楽になります。それがわかっているから安倍さんは最後まで粘るとは思いますが、あとは
世論の力です」
すると雅子さんはこう言った。
「安倍さんやめたらしゃべるんや。そういう仕組みなんですね。男ってつまらんなあ。私は美並(近畿財務)局長や事務次官や役所の人が来られた後、率直に思ったのは『男には生まれたくないなあ』でした。つまんない建前で生きているのがアホらしく思えました」