令和2年7月豪雨〜地球温暖化がもたらす経済的リスク。『不都合な真実』が鳴らした警鐘が次々と現実に……

地球温暖化は人々の暮らしを根底から揺るがす

 地球温暖化が怖いのは、その悪影響が何も豪雨の増加だとか「エコ」な話だとかに限った話ではないことだ。このまま突き進めば、我々が営む今の暮らしが持続不可能になるほどの経済的インパクトが待ち受けている。 「海面の上昇によって日本の砂浜の85%がなくなると言われています。また温暖化が進むと今、その場所で育っている作物が収穫できなくなるわけですから、立ちゆかなくなる農家も増えるでしょう。生態系に与える影響も大きく、疫病や感染症を誘発する可能性もあります。例えばテング熱を媒介するのは蚊ですが、温暖化することでこれまでは生存できなかった場所でも見られるようになっています」  地球規模で見ればシベリアでは蛾が大量発生したり、オーストラリアでも山火事を誘発している。温暖化に起因すると見られる自然災害は別表にまとめた通りだが、もはや先送りできない問題であることは明白だ。  また、自然災害からの復旧には莫大なコストがかかる。米保険会社エーオンによると、’18年に起きた自然災害による経済損失は世界全体で25兆円。関西空港が浸水した台風21号は4位、250人が命を落とした西日本豪雨が5位にランクインするなど、日本は世界的に見ても自然災害を受けやすい立地にある。 地球温暖化 エコノミストの永濱利廣氏が語る。 「’17年に起きた九州北部豪雨と今回の豪雨は雨が降った期間がほぼ同じことから、九州における経済損失は1900億円ほどと推測できます。インフラの復興は国の予算で賄われますが、一方で企業や個人も自然災害に対してリスクやコストを負わなくてはいけません。コロナ禍で旧来の常識が見直される機会が多くありましたが、自然災害という観点からも生活を見直す時期にきているのかもしれません」  自然を前に、人は無力である。後世によりよい社会を残すためにも、人類は今こそ自然環境と共存しうる「ニューノーマル」な道を模索すべきではないだろうか。

損害保険の金額でみる自然災害の規模

 日本損害保険協会は毎年、風水害による支払保険金調査結果を発表している。データによれば、'01年の台風11号で過去最多となって以降、毎年のように記録を更新している。昨年の令和元年房総半島台風では、総額5826億円。千葉県だけで約半数の2692億円と、被害の大きさが顕著に浮かび上がった。 <取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社>
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