そして、そんな活動がようやく実を結び始めたころ、ホスト業界を揺るがす事件が起きた。’11年、愛田武が脳梗塞で倒れたことで、権利を主張する者が続々と登場。いわゆる「お家騒動」が勃発し、愛本店の経営が一気に揺らいでしまったのだ。
「最大で400人いたホストは30人ほどになり、お客さんは一日平均4組。歌舞伎町のシンボルは失われる寸前でした。それで、新宿署から呼ばれて『お前は愛田武の2代目なのに黙って見過ごすのか』と言われたこともあり、僕が顧問として愛本店に関わることになったんです。ただ、僕一人の力だけではとても無理ですから、業界大手『グループダンディ』のCOO・まりも校長にも協力してもらい、店の再建に尽力しました。2人とも10年以上テーブルについていなかったのですが、一日5~10組呼んで接客。毎日ヘベレケになるまで飲みましたよ(笑)」
最後のシャンパンタワー。移転先でも同様に輝く!
新店舗のオープンは8月が目標。移転先等の詳細は「歌舞伎町しゅわしゅわ倶楽部」にて
そんな2人の努力がようやく実り、愛本店がかつての盛況を取り戻したのはほんの数年前のこと。今回の移転を前に有終の美を飾れたことが、天国の愛田武にも誇らしい。
「コロナで大変な時期でしたが終幕に泥を塗らないよう、店の検査、消毒、お客様の検温と感染対策は徹底しました。歌舞伎町から感染者が出ているのは事実ですが、我々、歌舞伎町ホスト協力会も新宿区の吉住健一区長と会合を重ね、ホストにPCR検査に促すなど実効性のあるガイドライン作りを行っています。7月頭からは、ホストが街頭でマスクを配る感染拡大防止活動もしています。新しい愛本店も愛田武の魂を引き継ぎ、ホスト業界の模範となり、歌舞伎町のイメージも変えるような店にしたいですね」
“夜の街”の逆境の中で、再び愛本店が輝くことを期待したい。
【「愛本店」顧問歌舞伎町ホスト協力会会長・北条雄一氏】
暴走族を引退後、歌舞伎町No.1ホストに。青年実業家として多方面で活躍する中、愛本店を再興。YouTube「歌舞伎町しゅわしゅわ倶楽部」を主宰。眼帯は目の手術直後のため着用
<取材・文/上野友行 撮影/長谷英史>