考えすぎなダメ企業、ゆるふわな一流企業。実行力の差は会議の仕方にあった

実は大切な「ゆるい」合意

 しかし、その後に潜む落とし穴に陥ると、議論が収束しなくなる。大事なポイントは、最も深刻な異論や懸念から議論をしはじめて、上位3つ程度の異論や懸念について合意形成ができたら、議論をやめて実行に移すことだ。それも、「試しにやってみよう」「とりあえず、この段階で実行に移してみよう」という中途半端な合意でよい。  異論や懸念が20出されたら、それらの全てについて合意しない限り実行しない、隅々まで検討して小さな問題も全て解消されたら合意する……。そんな風に進めてしまうといつまでも実行に移せず、議論しただけで終わってしまう。そのことの損失に気づかなければならない。  実行に移している間に状況が変わり、新たな異論や懸念が出てくるかもしれないし、当初は低かった深刻度合が高まったり、逆に低下する異論や懸念もある。異論や懸念を洗い上げて、深刻なものから堀り下げたうえで議論したのであれば、「試しに実施しよう」「まずは実行して、また検討してみよう」という程度の、ゆるい合意で実行に移すのだ。  成果を上げている組織の行動を分解すると、こうしたプロセスを実行していることがわかった。そして、こうした組織のメンバーは行動発揮する、話法を繰り出す能動性と瞬発力が高いのだ。

実行できる程度の合意でもOK

 質問:中途半端な合意は不適切ではないか  「試しにこれでやってみてもよい」「少なくとも反対しない」というような中途半端な合意形成であれば、その後、その合意がひっくり返るかもしれないので、やらないほうがましなのではないでしょうか。そのようないいかげんな方法はとってはいけないのではないでしょうか  回答:中途半端な合意でも合意形成はできる  最も深刻な問題の深刻度合が100だったとします。100ということは、10人いれば10人が深刻だと思っている、ひとりの頭のなかでも100%深刻だと思っているという状態です。例えば、2番目に深刻な問題の深刻度合が80、3番目は60というように深刻度合が下がっていくとします。  1番目から3番目までの深刻な問題を「示唆質問」と「まとめの質問」で合意形成すれば、合計で240の深刻度合が解消されたということになります。「試しにやってみてもよい」「少なくとも反対しない」というレベルで合意していくので、半分と見ても120です。ここまでで、100を超える深刻度合が解消されているのです。4番目以降の問題を解消しなかったとしても合意形成できている理由はそこにあります。 異論や懸念の深刻度合いのグラフ 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第197回】 <取材・文/山口博>
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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