財務大臣が「日本は単一民族」と語る日本、BLM運動で少しずつ変化していくイギリス
制度的人種差別「ウィンドラッシュ・スキャンダル」の報告書が公開
近年イギリスでは、社会の仕組みの中に組み込まれているさまざまな人種差別が問題になっていた。その1つが「ウィンドラッシュ ・スキャンダル」で、2018年当時の政権の信用を地に落とし、内務大臣を辞任に追い込んだ。
イギリスでは1948年〜1973年にかけて、イギリス領であったジャマイカなどカリブ海諸国から、第二次世界大戦後のイギリスの労働力不足を補うために多くの人々が船に乗ってやってきた。彼らのことを「ウィンドラッシュ世代」とイギリスでは呼ぶ。船の第一便が「エンパイア・ウィンドラッシュ号」だったからだ。
当時のイギリス領から来英した彼らは、1971年の移民法によって自動的にイギリスでの永住権が付与された。親に連れられて渡英した子供たちも多く、彼らはそのままイギリスで育ち就労し、イギリス人として暮らしていた。
事態が急転直下したのは、2012年のイギリス政府によって打ち出された、移民難民への「敵対的環境」施策の導入だった。移民法が改正され、移民は就労や家を借りる際や医療などの社会保障を受ける場合に、国籍や在留資格を示す書類の提示が必須となった。しかし、ウィンドラッシュ世代のほとんどは親のパスポートに依拠して入国していて、公的書類を持っていなかった。
内務省はウィンドラッシュ世代に対して、1973年に遡って彼らがイギリスに居住していた事実を示す証拠の提示を求めたが、数十年分の証拠を集めるのは不可能だった。また後に発覚したことだが、内務省は2010年の引っ越しの際、彼らの入国カード等の当時の記録を破棄していて、ウィンドラッシュ世代の公的な書類はまったく残されていなかった。
こうして、彼らは合法的に入国していたにも関わらず、その正当性を証明する手段を持ちえなかった。多くの人が「不法移民」とされて職を失い、銀行口座・運転免許のみならず医療へのアクセスまで絶たれる事態に陥ったのだ。また、入管収容所に収容されたものも多く、中には一度も見たことのない「母国」に強制送還される人もいた。
イギリス政府のウィンドラッシュ世代に対する一連の非人道的な行為は、2017年末から2018年にかけて新聞報道で明らかにされた。「自分がイギリス人だと信じて疑ったことのなかった」数千人もの人々が、「敵対的環境」政策により「人生を壊された」という事実は、イギリスに一大センセーションを巻き起こした。メイ首相が補償の支払いと謝罪をしたものの、ラッド内務大臣は引責辞任に追い込まれる事態となった。
政府は、ウィンドラッシュ・スキャンダルの抜本的な調査を約束したが、約2年の時を経て報告書が完成し、ロックダウン直前の2020年3月19日に公開された。275ページの報告書は、根本的な原因として1960年代以降の移民政策において政府の人種差別的な意図があり、制度的な人種差別の結果、本件が起きたとして政府を厳しく批判した。
BLM抗議活動の最中に放映された、ウィンドラッシュ・スキャンダルのドキュメンタリー
「ウィンドラッシュ世代が耐え抜いた想像を絶する苦しみを表現した作品だ。現政権を代表して、被害者とその家族の皆さまに再びおわび申し上げます。内務省が本件に関わるすべてのコミュニティを守り、耳を傾けるために、できることをすべていたします」#SittingInLimbo epitomises the unimaginable suffering endured by the Windrush generation. On behalf of successive governments, I apologise again to victims & their families. I will do all I can to ensure @ukhomeoffice protects & listens to every part of the community it serves.
— Priti Patel (@pritipatel) June 8, 2020
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