コロナで一変した日常。私たちの恋愛市場のゆくえ。<アラサー独女の婚活・恋活市場調査 最終回>

コロナという”制限”のおかげで恋愛が本質的に

 もちろん、これまでのようにスムーズにはいかないことも多いだろう。デートに使う店は雰囲気がいいことだけでなく、換気がしっかりできているか、密環境になっていないかも下調べが必要だ。県外の人と出会っても、電車での移動距離が長いというだけで会うための大きな障壁となる。  しかし、この状況をポジティブに考えることもできる。デートで使う飲食店は、これまで「食べログで高評価か」「高級であるか」などを女性からチェックされていたかもしれない。しかし今は夜空いている店も限られており、ソーシャルディスタンスが保たれている店を選べるかなど、気遣いがあるかどうかも大きくチェックされているだろう。  素手で握る高級寿司より、テラスで楽しめるワインバルでいい。デートでは札束で殴れる人よりも、優しさを持てる人が評価されやすく、最も本質的な評価がされやすい時期になったと言える。  また、移動距離が長いとデートのハードルも上がってくるため、より環境が近い人との恋愛が好ましく感じられる。今までより狭い範囲の条件から、相手を探すことになる。家が近いこと、働き方が近いこと、恋愛への意欲が近いこと……。  マッチングアプリの普及で、条件で相手を選ぶようになり、その条件がに当てはまる人が多く、絞りきれない大人数の中から自分に合う人を選べなかったという人もいるはずだ。コロナという制限のおかげでその条件が狭まれば、より少ない人数に絞ることができるはずだ。  星の数ほどいる異性の中から「よりいい人を」「より広い範囲で」「時間をかけて」選ぼうとしていた人々にとって、コロナは大きな制限になる。インターネットの普及により、恋愛相手の選択の範囲は広すぎるくらいになっていた。コロナの制限で、むしろ一人で扱いきれるだけの「適正範囲」になったとも言えるだろう。  相手を選ぶ基準や範囲が自分の適正範囲内になり、デートで評価される点も、より人間らしい部分になっている。つらい時だからこそ、今始まる恋愛なら、より本質的な関係が築けるのではないだろうか。

令和の恋愛は「コスパ悪い」、でも

 世の中は、少し便利になりすぎている。家にいてもSNSで人と繋がることができ、サブスクや動画アプリなど、一人でも時間を潰す方法はたくさんある。  そんな中、コロナという”制限”は、私たちにオフラインでの対人コミュニケーションの大切さを思い出させてくれた。「いつ何があるか分からない」という危機感から、誰かと一緒にいたいと思う人も増えた。  日本の未婚化・少子化は深刻化しているが、コロナによって私たちは「恋愛」「結婚」、そして「家族」の大切さを思い出すことができたはずだ。依然として、恋愛や婚活がしやすい状況になっているとは言えない。しかし私たちは今、恋愛や結婚の本質的な必要性や、他のエンターテイメントでは代えがきかない存在だということも実感したのではないだろうか。  令和の時代、恋愛は他のコンテンツよりもコスパが悪い。誰かと価値観をすり合わせるのは大変で手間がかかることだが、様々な制限のかかる今なら、その手間をかける時間の余裕も生まれているのではないだろうか。  令和の恋愛、するなら今かもしれない。 <文/ミクニシオリ>
1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携ったのち、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。
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