アート引越センター、不当な「賠償金」の返還を命じられる。元社員らが一部勝訴

不当な引っ越し事故賠償金、全額返還を命じる

 「引っ越し事故賠償金」は、引っ越し中の物損事故1件につき3万円を上限に従業員に負担を求めるものだ。元従業員だったという人物が2017年10月、「賠償金」が嵩んで給与がマイナスになってしまったとツイートし、大きな話題になっていた。  原告らが勤務していた横浜都筑支店では、賠償金の名目で1日当たり500円徴収していた。横浜地裁は、この賠償金を全額返還するよう同社に命じた。  原告のひとりである佐藤美悠人さん(27)は判決を受けて、「働いていた当時は、この制度のことを当たり前だと思っていました。労働組合に加入してから初めて不当なことだと知りました。今回、全額返還されることになったのは当然だと思います」と話した。  なおこの制度自体は2017年12月に廃止されている。  他にも判決では、アルバイトだった原告のひとりに対し、当時支給されていなかった通勤手当に相当する分を支払うよう命じた。

組合の実態がない「偽装組合」

 原告らの主張が概ね認められた今回の判決であったが、代理人の指宿昭一弁護士は「偽装組合」に関して裁判所の判断に不満があるという。  「偽装組合」とは何か。指宿弁護士によると、「アートコーポレーション労働組合」は、組合大会も開かず、組合役員選挙も実施せず、組合活動らしきものは全くしていないという。  にもかかわらず、原告らは労働組合費を毎月1000円も給与から天引きされていた。この組合費の返還も求めたが、請求は退けられてしまった。  指宿弁護士は、「労働組合に値しない『偽装組合』の組合費の徴収を認めた、不当な判断だと思います」と話した。 <取材・文/HBO編集部>
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