国権の最高機関であり、国民から選ばれた政治家が、国の進む道を決めるために議論をする場、”国会”。
首相や閣僚には、国会に出席し、答弁する義務があるとされている。しかし近年の国会では、首相や大臣、副大臣、大臣政務官、政府参考人(官僚)といった政府の代表者が、委員の質問に対し「
お答えを差し控える」や「
答弁を控えさせていただきます」と答弁拒否する光景を目にするのが増えた。
そこで本連載では、安倍政権の約7年間を「控え」という単語をキーワードに、
誰が、どのような質問から逃げてきたのかを検証し、
政府が国民に対し何を隠そうとしてきたのかを探っていく。本記事はその第一弾。
本題に入る前に、首相や閣僚の出席義務について説明しておこう。
国会には、議院の最終的な意思決定をする”本会議”と、本会議での最終決定を行う前に、予算・条約・法律案などの議案を専門的に審査する機関である”委員会”がある。
委員会には大きく分けて常任委員会と特別委員会があり、名称は少し異なるが衆参ともに17の常任委員会が設けられ、必要と認められた時に特別委員会が設置される。
そして、首相や閣僚は、議会への出席を求められた場合に出席義務が存在すると日本国憲法第63条に規定されている。
1975年6月5日の参議院法務委員会で、吉國一郎内閣法制局長官は、「憲法63条におきましては、内閣総理大臣その他の国務大臣の議院出席の権利と義務を規定いたしております。このことは、内閣総理大臣その他の国務大臣が議院に出席をいたしました場合には、発言をすることができ、また政治上あるいは行政上の問題について答弁し説明すべきことを当然の前提といたしておるのでございます。つまり、答弁し説明をする義務があるというふうに考えております」と答弁している。
また、2008年福田康夫内閣の
『衆議院議員平野博文君提出閣僚等の答弁・説明義務及び「あたご」事故の調査等に関する質問に対する答弁書』には、「憲法第六十三条において、内閣総理大臣その他の国務大臣は、議院で答弁又は説明のため出席を求められたときは出席しなければならないとされており、これは、国会において誠実に答弁する責任を負っていることを前提としていると認識している」とある。首相や閣僚には、出席義務のみならず答弁義務も存在していると繰り返し述べられてきたのだ。
このように、委員(委員会に所属している国会議員)からの質問に対し首相や閣僚が誠実に答弁することで、民主主義の根幹である国会での議論が成り立っている。