現高校3年生(2002年4月~2003年3月生まれ)は、これまでのどの年の高校3年生よりも大学入試に振り回されてきた人達です。どうしてそのようになったのかは、共通テストの最初の受験生になってしまったことと新型コロナが蔓延したときに受験学年であることが重なったことも要因ですが、それに留まらず、これまでの大学入試に関する決定事項が何度も変更され、目指すものが変えられてきたことによります。
まず、現高校3年生の大学入試に関わることの主な経緯を振り返ると次のようになります。
◆2017年7月、第11回「大学入学共通テスト」準備・検討グループにて、英語の民間試験の利用の方針が決まる。これによって、共通テストの英語が2技能を測るものに修正され、同時に、共通テストで、数学と国語の記述式の出題が決定される。
◆これ以降、GTEC、英検などに対応ができるようにカリキュラムを組む高校も現れる。
◆2017年11月、共通テスト実施のための第1回試行調査を実施。
◆2018年11月、共通テスト実施のための第2回試行調査を実施。この段階で、数学、国語の記述式の出題形式がほぼ確定する。
◆2019年11月1日、英語の民間試験の利用の延期が決定される。
◆2019年12月17日、共通テストの数学と国語の記述式の問題の出題が延期される。
◆2020年3月~5月:新型コロナウィルスの蔓延のために、多くの高校が休校になる。
◆2020年6月11日、共通テストが予定通り2021年1月16日、17日に実施される見込みであることが報道される。
◆2020年6月13日:全国高等学校長協会(全高長)が大学入試の大学入学共通テストを含むすべての大学入学選抜の日程を1か月延期することを求める方針を決定し、16日に要望書を提出しようとした。文科省は受け取りを拒否。
◆2020年6月17日:共通テストが本試とその2週間後の追試、さらに2月中に追試の追試が行われるとの発表。
このように、今の高校3年生は、最初は、試験の形式が確定しないことで振り回され、今年になってからは、試験日、試験の実施方法が定まらないことで振り回されています。
発表の遅さと、決定後の大人たちの勝手な主張が受験生を苦しめる
現在、「大学入試のあり方に関する検討会議」が第9回まで進んでいます。この会議は、そもそも来年度の共通テストの日程を決める会議ではないのですが、来年度の入試日程もここ数回議題にあがっています。文科省の外部団体が陳情書を文科省に届けても門前払いが起こりうることを考えると、文科大臣と文科省に直接声が届く重要な会議でもあります。
これまでは、第7回の会議では、外部から招へいされた倉元直樹教授(東北大学)が、「受験生が目標にしてきた入試を可能な限りそのまま実現するべき」と唱え、第8回の会議では、芝井敬司委員(日本私立大学連盟)が、入試を実施する立場から、現時点(6月5日時点)での日程の変更、出題の範囲の変更はあり得ないということを強く主張していました。(怒っているようにも聞こえました。)なお、この方以外の委員からも来年度の共通テストを心配した発言をされています。
この会議の委員の中には、ほとんど存在感のない委員もいるものの、過半数以上は、熱心で優れた専門性をもつ方たちです。しかし、委員を批判するわけではありませんが、一つ物足りないのは、「受験生目線で語れる人がいないこと」です。もちろん、受験生にアンケートをとって調査をすることはできます。しかし、教育は、データの数値を分析したり、たまに授業を覗きに来て様子を見るだけではなく、一定期間、生徒と時間をともにして並走することも大切です。また、大学に合格した学生だけでなく、不合格になった学生に関わることで、今の教育の問題点で浮き彫りになるものもあるのです。