コロナ禍が生み出した新たな集客要素のもう一つが「
貯玉」である。
まずパチンコ店における「貯玉」の意味が分からない方のために簡潔に説明するのであれば、パチンコ店はお店ごとに会員カードを用意しており、
自身の出玉を会員カードに、貯金ならぬ「貯玉」をしておくことが出来る。
客にとっての「貯玉」のメリットはいくつかあるが、一番は出玉を都度、賞品に交換する必要がなく、翌日以降の遊技時に現金投資をすることなく遊技が出来るということだろう。より突っ込んだ言い方をすれば、投資額と賞品額(価値)の差分を帳消しに出来るということ。逆に店側のメリットは、貯玉を持っている客は再来店の可能性が高いため、顧客の囲い込みが出来るというところか。
しかしこのコロナ禍、パチンコ店が営業自粛を始めるという噂が出回ったタイミングで、全国のパチンコ店では多くの客が自身の貯玉を全額引き出してしまうという現象が起こった。長期の休業によりそのまま閉店してしまったら、貯玉がフイになってしまうと思った行動である。(実際には仮に閉店しても多くの場合100万円相当のカタログ賞品への交換は可能であるが)
しかしこれがパチンコ店には新たな集客のチャンスにもなっている。
今まではそれぞれのパチンコ店が会員カードによる囲い込みを行っていたが、その「囲い」が外れた現状で、客はフラットな視点で店の選択を出来る。
会員カードに多くの貯玉をしていた客というのは、言い換えれば再来店頻度が高いコアな客層に該当する。この客層を新たに囲い込めれば、
競合市場内での客の流動が生まれ、地域内でのパチンコ店の「序列」の変化すら引き起こす。
「組合からは広告宣伝を控えるよう通達が来ている。露骨な広告宣伝をせず、いかに新規顧客を開拓するのかは難題。でもコアな客層は自分たちの情報網を持っており、優良店という噂は広がりやすい。売上や粗利が激減しているが、それでも無理に回収はせず客にとって割の良い営業をしろと上司からも言われている」(前出の店長)
コロナ禍がパチンコ業界に与えたダメージは計り知れない。
だからこそ、今取り組むべきはコロナ以前とコロナ後の変化を敏感に感じ取り、そこから生まれた小さなチャンスに果敢にアタックしていくこと。
パチンコ業界に限らず、すべてのビジネスが今はそうだ。
<文/安達夕>