ヒップホップは反逆のカルチャー。手をあげ、拍手をするのはNG?<ダメリーマン成り上がり道 #32>

「文科系の劣等感」は「本物」か

——身近なテーマのほうが、一般のリスナーは入りやすいのかもしれないですけどね。 RAW:「ただ、それは俺らが思ってる劣等感じゃないんですよね。学歴もねえし、カネもねえ、と。でも、『本当にカネがねえって、どういうことかわかるかお前ら?』っていう。それがみんな本当にわかってないんで、そういうヒップホップに喰らってるんすよ。『本物に喰らわないなら、カネを落とすな』っていうのが、俺の持論です」 正社員:「怖すぎる(笑)。俺の仕事、何もできねえじゃん!RAW:「(笑)。本当に『ヒップホップ』っていうのはそういうもんなんですよ。ただ、『ラップミュージック』っていうのはまた違う。吉田くん(MC正社員)の例で言うと、ラップに対しては戦極みたいなイベントをやって還元して、ヒップホップに対してはその人選で還元してる。だから、ヒップホップにはあまり還元してないんだけど」 正社員:「どんどん俺の仕事をしにくくするんじゃないよ(笑)」 RAW:「まあ、日本語ラップ、ジャパニーズのなかに、最初バンッとフリースタイルの文化を打ち出したのは違う人たちだけど、それを継続して定着させたのは、吉田くんなんじゃないですか」

日米で異なるヒップホップ文化

——文化やジャンルを表す言葉の意味を定義するのは難しいですよね。 RAW :USの現行のヒップホップと日本のヒップホップはまったく違うんで。『ゲトー』っていう意味も、『ギャング』っていう意味も違うし。こないだも、とあるラッパーに『お前が吸わしてくれたネタマジでクソだった』みたいなこと言ってる奴がいたんですよ。向こう(アメリカ)だったら数日後にその仲間が襲いに来たりするじゃないですか」 ——たしかにシャレじゃ済まないでしょうね。 RAW:日本は文化的にも政治的にも、そこまで怒りがデカいことってなかったですからね。だから、平和ボケしてて、暴力的なことも起こらなかった。ただ、今はどんどん文化も変わって、外国からも人が来てる。100年後ぐらいには国がスゴい変わるって言われていますよね」  はたして、ヒップホップシーン、そして日本の未来はどうなるのか。MC正社員とRAWAXXXの対談、次回はお茶の間を巻き込んだフリースタイルブームについて語ってもらう。 <取材・文/HBO編集部>
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
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