海の向こうの人種差別に憤るだけでなく、我々の社会にある差別を考えよう

憎悪と恐怖と手段

 コロナ下でもいろいろなことが置きました。 ◆新型肺炎を理由に「中国人は入店禁止」 箱根の駄菓子店:朝日新聞デジタル ◆「中国人観光客の入店お断り」の件 – 「麺や ハレル家」きまぐれ日記  アメリカでたびたび人種による殺人が起こる理由の一つは、銃規制がないことに原因があるでしょう。日本で、ジョギング中の黒人が突然射殺されるようなことはありません。 「撃たれるかもしれない」という恐怖が、「やられる前にやる」暴力という結果を生むのです。憎悪と恐怖と手段が結びついた時、悲劇が起こります。  しかし、それは日本に人種差別がないという理由にはなりません。  今やルワンダはアフリカ諸国でも最も治安のいい国の一つですが、かつてこの国では人口の10〰20%も亡くなるジェノサイド(大虐殺)がおきました。ドイツのホロコーストも、言うまでもないでしょう。  実際、日本社会で普通に暮らしていて差別的な発言に出くわすことは、珍しいことではありません。(人種差別・性差別、その他諸々含めて)  かつて下記のような発言を行った団体の代表は、今度の都知事選にも出馬します。
私自身も、視界に入れなければ何とかなると思っていた。 「良い韓国人も悪い韓国人も どちらも殺せ」 「朝鮮人 首吊(つ)レ毒飲メ 飛ビ降リロ」  今年2月9日、在特会と友好関係にある団体主催のデモで掲げられていたというプラカードを目にした人の多くが、あっと息をのんだ。殺人教唆とも取れる言葉が、平然と踊っていたからだ
〈出典:朝日新聞〉 「憎悪と恐怖と手段」と先程書きました。  かつて、関東大震災において「朝鮮人が暴動を起こしている」という流言飛語が飛び交い、結果として多くの朝鮮人が暴行を受けました。
戦後NHK会長にもなった野村秀雄は当時朝日新聞の政治部記者だったが、社会部の記者が、「各所を鮮人が襲撃しているから、朝日新聞で触れ回ってくれと警視庁が言っている」と駆け込んできたと振り返っている。  評論家の中島健蔵は、警察署の板塀に「不逞朝鮮人が反乱を起こそうとしているから警戒せよ」という張り紙が出ていたことを記憶している。  当時警視庁のナンバー2だった正力松太郎は、一時は「朝鮮人騒ぎは事実」と信じるなど、「警視庁も失敗した」ことを認めている。
〈出典:関東大震災で東京市民の99%が信じた「デマ」とは 『証言集 関東大震災の直後 朝鮮人と日本人』 | J-CAST BOOKウォッチ〉  有名な話ですが、演出家の千田是也氏は「朝鮮人が反乱している」という噂を信じて杖を持って飛び出したら、自分が朝鮮人に間違われて殺されかけたそうです。(たまたま近所の人がいたので助かったとか)  現職の東京都知事である小池百合子氏は、この件について追悼文を送っていません。〈参照:小池知事、今年も追悼文送らず 関東大震災の朝鮮人虐殺:朝日新聞デジタル〉  我々の社会にも、憎悪と恐怖は存在します。アメリカの暴動と隔てている壁は、もしかするととても薄いかもしれない。  だとすれば、対岸の火事ではなく、我々もまた、自らの社会が抱える問題に向き合わなくてはいけない、と思います。  銃口は、誰かに向けられていて、ただ引き金が引かれていないだけかもしれないのです。
<文/遠藤結万>
えんどう・ゆうま(Twitter ID:@yumaendo/筆者のnote)●早稲田大学卒業後、グーグル株式会社(現グーグル合同会社)に入社。中小企業向けセールスとアジア太平洋地域の分析を担当。退社後、CMO株式会社を設立し、インハウス化やマーケティング戦略支援、マーケティング教育などを手がける。デジタルマーケティングについてなどを「ブログ」にて執筆・公開中。著書に『世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング』(技術評論社)
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