「ビデオをオンにするということは、自宅など
プライベートな背景の共有を強要することになるので、主催者としてはさせてはならない」という意見を言う人もいる。
リモート会議の背景を隠す機能を使えばよいだけの話だ。
「会議や研修とは関係ない雑音が入ってくるので、
発言するときだけマイクをオンにするべきだ」という意見もある。発言するときにマイクをオンにする操作の手間と時間を要することは、発言する意欲を下げ、意見や質問を洗い上げる度合を低下させ、
ネガティブインパクトを生んでしまうのでお勧めしない。私は、以下の表のとおり、リモート会議の設定やガイドの仕方によって、リモート会議や研修で、双方向の意見交換や質疑応答、双方向の演習を実現している。
そもそも「
寝た子を起こすことになるので、ビデオやマイクをオンにしたくない」という本音に接したこともある。これはリモートの会議でも、対面の会議でも言えることだが、本連載でも紹介している、
4つの質問による合意形成手法を、進行役が繰り出すことで解決できる。
寝た子を起こして、
異論や懸念を解消して、合意形成する方法だ。そのためにも、
リモートではビデオとマイクを常時オンにすることが不可欠なのだ。
質問:洗い上げ質問は「寝た子を起こす」ことにならないか
洗い上げ質問で、
いきなり異論や懸念を洗い上げるなどということは、
寝た子を起こすことになり、それこそ
冒頭から会議が紛糾するのではないでしょうか? たいへんリスクの大きい方法のように思えてならないのですが。
回答:応酬しないので紛糾しない
寝た子を起こすことになります。むしろ、
あえて寝た子を起こすのです。しかし、心配は無用です。寝た子を起こしても紛糾しないのです。紛糾するのは、応酬するからです。
洗い上げ質問では決して応酬しないので、紛糾のしようがないのです。
洗い上げ質問のとても大事なポイントは、異論や懸念が出されたら、どのような意見であろうとも、方針説明する人や進行役の人は、その
意見に対して反論しないで、意見が出されることに対して歓迎の意思表示をすることです。「なるほど、そういう意見もありますね。他にも異論や懸念がありますか?」「よいご意見ですね。さらに出していただけますか?」「これまで気づきませんでした。もっとありますか?」というように、
歓迎の意思表示をしてさらに洗い上げます。
方針説明者も進行役も、出された異論や懸念に対して、「その意見は違います。先ほど説明したでしょう」「それは、こういうことなのです」などと、
決して反論しないことがポイントです。決して応酬しないので、決して紛糾しないのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第192回】
<取材・文/山口博>