静かに繰り広げられる、「アベノマスク」 Wikipediaの攻防

言葉の意味がリアルタイムに膨らんでいく

 こうした、成立直後の言葉の議論を追っていくのは非常に興味深い。単語の誕生や、その意味の変遷、社会の中での扱われ方の変化を観察することは、言葉について理解するのに役立つ。  言葉は時間とともに意味を変えていく。登場時の意味と、普及時の意味が変わることも多い。定着すると思われていた語がすたれたり、意外な言葉が生き残ったりすることもある。新語の登場頻度は、インターネット時代になり高くなっている。  私は以前、ネットスラングについて調べて、それをネタにした短編小説をネットで書いていた。また、日に数度は辞書を引き、言葉を調べている。インターネットは、気軽に言葉の意味を検索できる。そのため、紙の国語辞典を利用してた頃より、圧倒的に多く言葉の意味を調べている。  新しい言葉が出てくれば、その意味と周辺情報をまとめたページが存在していて欲しいと考えるのは、自然な流れだろう。Wikipedia は、その受け皿の一つになっている。Wikipedia は小さな空間だが、社会の縮図のようなところがある。そこでの議論は時に、新しい言葉が出てきた時の、人々の反応を観察できることがある。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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