遅すぎセコすぎ煩雑すぎの「安倍コロナ経済対策」では、沈みゆく日本経済を救えない

コロナショック

imageteam / PIXTA(ピクスタ)

緊急事態宣言解除も、経済の緊急事態は終わらない

 全都道府県に出されていた緊急事態宣言が解かれた。  新規の感染者は確実に減った。これは全国民と中小零細企業に至るまでの自粛の成果である。国民と企業は、経済よりも命を優先させた。中国に続き、欧米での医療崩壊で毎日積み上がっていく新規感染者と死者の数に慄いた。日本の高齢化、安倍政権で確実に進んだ医療現場のリストラの現実を考えると、日本はガソリンが壊れた場所のようだった。火が点いたら終わりなのだ。だから、政治家に言われる前に、徹底的な自粛をしなければオーバーシュートすることは誰の目にも明らかだった。  さらに、知見のある専門家の解説も十分に聞いた。そして、いろんな政府側の専門家委員会以外にも様々な考えがあることを知り、声をあげた。今の日本では欧米や韓国、台湾では当たり前の、検査と隔離も不十分だと知った。最新のテクノロジーが使えないのだ。だから、原始的な方法ではあるものの、徹底的な巣篭もりと手洗い、ソーシャルディスタンスの確保、そして、できうる限りの消毒とマスク着用を国民全員が2月下旬から3か月も徹底した。  緊急事態宣言にそのものによる自粛は東京など首都圏で2か月弱だったが、実質は2月24日の首相の大規模イベント自粛要請から始まったと言える。つまり、自粛はすでに3か月以上に及んでいるのである。  今は、長期の自粛効果と夏期の高温多湿化でウィルスの感染力も落ちているものの、この秋にも再び第二波に日本が襲われる可能性も十分にあるとされる新型コロナウィルス。やっと緊急事態宣言は解除されたが、経済の緊急事態は深刻さをさらに増している

メッキが剥がれた「アベノミクス」

 それでなくても、日本経済は昨年秋に消費増税を安倍政権が強行してしまったために、2019年10−12月の日本経済は、GDPが年率マイナス7.3%で落ち込むという非常事態に既になっていた。さらに、2020年1−3月期は消費増税の落ち込みから立ち直っていないところに、3月からは新型コロナウイルスの影響も出始めてしまい、2期連続のマイナス成長、年率マイナス3.4%(速報値)という値を出してしまった。もちろん、この4−6月期はさらに大幅なマイナス成長が確実視されている。さらに7−9月期に経済のV字回復を見込む専門家は少ない。  つまり、安倍政権はその7年目で、日本経済を4半期、つまり1年を通してマイナス成長にしてしまったのだ。そこに、さらに暗雲が立ち込めてきた。報道によると、この10月にはIOC(国際オリンピック委員会)が来年2021年に延期された夏の東京オリンピックの開催の可否を決める可能性が浮上している。首相をはじめ日本側から2021年夏以降の延期はないと申し入れがあったともされている。なぜ、新型コロナウィルスが欧米で猛威を振るう最中、まだ世界的な蔓延の行く末の不透明な3月の時点で拙速に延期の日程まで決めてしまったのかは理解できない。日本にとって、もはや東京オリンピック・パラリンピックの中止は受け入れられないはずなのだ。だから、まともな政治家なら、2020年夏の延期は受け入れて、延期の期日は新型コロナウィルス の状況を見ながらIOCと協議の上で決めるとしておけば良かったはずである。  東京オリンピック2020は、当初のプレゼンテーションにあったような、費用を抑えたコンパクトな五輪ではなくなっている。7000億円の当初予算はすでに3兆円を超えている。この投資に見合った大会だったと国民に納得してもらう必要がある。大会そのものの評価だけでない、これだけ巨費を投じた国家プロジェクトとして経済的な効果もあったとされなければならないはずだ。  10月に東京オリンピックの中止が決定するようなことがあると、開催を見込んで投資をしてきた企業などにも多大な損失を確定させてしまうことになる。新型コロナウィルス だけでも戦後最悪の経済状態と言われているのに、それに加えて東京五輪中止ショックが重なったりでもしたら、企業も消費者も今年だけでなく、2021年の日本経済に対しても悲観的になるだろう。  日本は新型コロナウィルスによるマイナスと、早急に延期の日程を決めたために追い込まれる東京五輪中止によるマイナスの経済に対する大きな2つのマイナス効果が同時期に重なり合って、まるでドップラー効果のように、日本経済の足を大きく引っ張る可能性が出てきた。下手をすると大きく底割れしかねない。
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個人消費活性化のために必要なのは消費税一時凍結と……!?
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