遅すぎセコすぎ煩雑すぎの「安倍コロナ経済対策」では、沈みゆく日本経済を救えない

学生への支援金も実際は一部だけ

 大学、大学院、短大、専門学校などで学ぶものの経済環境は厳しい。日本の大学生の今や半数以上が何らかの奨学金を利用しているのが現状だ。学費を払うためにアルバイトをしている学生も少なくない。しかし、コロナウイルスによる大学キャンパスはロックダウン状態で、アルバイトは解雇で収入は途絶えてしまった。多くの大学生などから、学費の半額免除を求める声が上がるのも当然だ。そんな学生の窮状を救うと期待されたのが「学生支援緊急給付金」で10万円、住民税非課税世帯の学生の場合は20万円の支給があるとされた。金額は少ないが、急場は凌げるだろうと思っていた。その内容が明らかになるにつれて諦め感が強まっている。  最初に問題にされたのが外国人留学生に関して成績上位3割までを対象とするとして、給付を学業で絞るのかと批判を浴びた。ところが、さらに調べていくと、この給付金は、日本人学生も徹底的に対象者を絞り込むことが明らかになった。日本の大学生の学生数はおおよそ290万人、専門学校には60万人が学ぶ。これに加えて、日本語学校や高専などの学生などもいるわけだ。ところが、今回の給付金の対象者は43万人で予算も530億円となっている。つまり、10万円もらえる人が33万人、20万もらえる人は10万人ということである。350万人以上の学生のうち、もらえるのは1割程度ということだ。これでは退学者が続出するだろう。大学経営も疲弊する。人材で国の繁栄を築いてきた日本の将来に対して安倍政権はどう考えているのだろうか?  もちろん、この3か月の間、ステイホームで感染拡大を阻止してきた国民の多くも困窮している。一律10万円の特別定額給付金も予想通りに5月中に手にした人はごく限られた人だ。このタイミングでマイナンバーカードの普及も推進したいと、小賢しいことも考えるから、支給手続きの事務作業をする各地方の自治体の現場が大混乱しているのはご存知の通りだ。  もっとシンプルに、もっと早く、安心してコロナウィルスに立ち向かう経済的な裏付けを国民に支給することを、政府は徹底して行うべきなのである。 <文/佐藤治彦>
さとうはるひこ●経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』(扶桑社新書)、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』 (扶桑社文庫・扶桑社新書)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)『お金が増える不思議なお金の話ーケチらないで暮らすと、なぜか豊かになる20のこと』(方丈社)『日経新聞を「早読み」する技術』 (PHPビジネス新書)『使い捨て店長』(洋泉社新書)
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