適菜収は、なぜ安倍総理とその支持者を「国賊」と批判するのか? 『国賊論』刊行の理由を聞く

安倍総理を「国賊」と呼ぶ理由

適菜収『国賊論』表紙

適菜収『国賊論』(ベストセラーズ)

―― 適菜さんは新著『国賊論 安倍晋三と仲間たち』(ベストセラーズ)で、安倍総理とその支持者たちを「国賊」と批判しています。「国賊」とは非常に過激な言葉ですが、このタイトルをつけた狙いはどこにあるのですか。 適菜収(以下、適菜):安倍政権支持者たちのやり口を逆手にとったのです。連中は安倍を批判する人たちに「国賊」「売国奴」「反日」などと罵声を浴びせます。戦時中も戦争に反対する人たちは「国賊」や「非国民」といったレッテルを貼られ、罵倒されました。「国賊」というレッテルを貼ることは、議論を封じるための常套手段です。  しかし、戦争に反対することが国家に仇するとは限らない。それどころか、無謀な戦争は国を壊します。言葉は厳密に定義し、かつ正確に使わなければならない。「精選版日本国語大辞典」には、国賊とは「国を乱し、世に害を与える者。国家に仇する者。国敵」とあります。安倍は総理になってから今日に至るまで、国を乱し、世に害を与えてきました。TPPや水道民営化などによって日本の国益を損ね、北方領土交渉では主権を棚上げしてしまった。定義通りの国賊です。  安倍は最初から一貫して売国政策を続けてきました。実際、第一次安倍内閣が誕生したとき、安倍は小泉純一郎の構造改革をしっかり引き継ぎ、加速させると言っています。安保法制騒動では憲法破壊に手を染め、国のかたちを変えてしまう移民政策を嘘とデマで押し通し、森友事件における財務省の公文書改竄、南スーダンPKOにおける防衛省の日報隠蔽、裁量労働制における厚生労働省のデータ捏造など、一連の「安倍事件」で国の信頼性を完全に破壊した。また、放送局の外資規制の撤廃をもくろみ、皇室に嫌がらせを続けてきました。 ―― 安倍政権の新型コロナウイルスへの対応があまりにも杜撰だったため、百田尚樹氏など、いままで安倍政権を熱烈に支持してきた人たちも安倍政権を批判するようになっています。彼らも安倍総理が「国賊」であることに気づいたのでしょうか。 適菜:百田は安倍を批判する一方で、「安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた」とも言っています。要するに、アリバイ作りでしょう。いま安倍政権を批判しておけば、安倍退陣後に「私の忠告を聞いてくれなかったから、こんなことになった」と言い訳できる。この手の卑劣な連中が、社会の空気を見ながら、泥船から逃げ出しはじめました。

それでも安倍内閣を支持する人たち

―― 安倍内閣の支持率は下落していますが、依然として安倍政権を支持している人たちも一定数います。 適菜:オウム真理教の信者と同じです。オウム信者たちは目の前の現実を無視し、何が起こっても、「尊師は悪くない」「尊師はむしろ被害者だ」の一点張りでした。そして批判されればされるほど、外部の声を聞かず、狂信的になっていく。  安倍はコロナ対策と称して全世帯に布マスクを配り始めましたが、そこには虫が混入していたり、カビが付着していた。しかも、マスクの製造会社をなかなか明かそうとしなかった。こんな得体の知れないマスクを使えるはずがありません。  先日、ネトウヨがツイッターで私に絡んできました。言っていることはよくわからなかったのですが、「アベノマスク」により日本は助かったということらしい。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の反対ですね。  こういう連中に擁護してもらえる安倍も果報者ですね。うんこにたかるハエみたいなものですが。
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保守思想を勉強しない保守派たち
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