黒川検事長に高額な退職金を支給することについて、総理の所感は?
全く質問に答えない安倍総理に対して、小川淳也議員は人事院が示す懲戒処分の指針(本記事冒頭で紹介した内容)を示し、今回の処分内容との矛盾を突いていく。その質疑は以下の通り。
小川淳也議員:「内閣の総責任者として総理の、では、感覚、感想を聞かせてください。
国家公務員の懲戒規定にはこうあります。
賭博をした職員は減給または戒告。そして、常習として賭博をした職員。これ報道によればあるいは検察内部の捜査も調査も終わってるんでしょうが、いろんな証言組み合わせると月に2~3回、数年単位で行なっていた。これも賭博の常習だと思いますが、
停職です。人事院のこのルールによればですね。それから再三申し上げますが6000万から7000万と言われる退職金をこんな不祥事でこういう形で辞任した検察官にも支給するのか。国民感情に照らして、総理。政府の最高責任者としての所感をお述べいただけませんか。」
安倍総理:「
あのー、ただいま、あー、小川委員がですね、この事案のですね、相当中身、詳細について、えー、ご質問を頂いているところでございますが、えー、まあ、今回はこの重要法案議案である社会福祉法の法案の質疑について、えー、出席をさせて頂き、その答弁を用意させて頂いているところでございますが、この法案、いわば法務省あるいは検察庁におけるですね、あのー、この処分あたっての調査等についてはですね、どういう内容であったかということについては、そこで、えー、調査にあたった方々からですね、聴取をして頂かなくてはですね、えー、頂く方がいいのではないかとこう思うわけでございまして(
赤信号)
えー、その中においてですね、えー、この、おー、処分にあたってはですね、えー、法務省そして検察庁において、えー、黒川氏の人事、いー、上のですね処分を決するにあたり、まあ、必要な調査を行ったと。こういうふうに私は報告を受けて承知しているところでございます。(
赤信号)」
小川淳也議員:「法律の専門家ではなく、やはり
政府の最高責任者として国民感情に照らして答弁する責任があると思いますよ。
そこからも回避されたと受け止めました。この質疑内容の変更については私の責めです。私の責任において、これは行わせて頂いております。」
安倍総理は2段落ともに論点をすり替えており、
赤信号とした。
1段落目
【質問】
黒川氏の退職金の総理の所感
↓ すり替え
【回答】
不祥事の調査結果
2段落目
【質問】黒川氏の
退職金の総理の所感
↓ すり替え
【回答】黒川氏の
処分決定の経緯
安倍総理が答弁の中で言及している通り、本来は社会福祉法案の質疑を予定していたにもかかわらず、急遽、小川議員が黒川氏の処分について問うたのは事実である。これについては、小川議員も「私の責任」と認めている。
とは言え、小川議員はシンプルに黒川氏の処分の矛盾について「総理の所感」を聞いているだけなのに、安倍総理はあたかも「調査の詳細な内容」を聞かれているかのように振る舞い、結局、質問には一言も答えなかったのである。
<文・図版作成/犬飼淳>
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いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身の
noteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。
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