「おむつを譲ります」「代わりに買い物しますよ」コロナ禍で見直されるご近所づきあいの力

コロナ禍で進む「共助」の動き

 そのほか、マチマチでは「代わりに買い物をします」「日中の一定時間だけお子さんを見ています」という申し出もあった。  ネットスーパーは混雑して使いにくい状況であるほか、スーパーは感染拡大を防ぐため、買い物には家庭の代表者一人で来店するように呼びかけるケースもある。しかし中にはお子さんを連れて行かざるをえない人もおり、そういう人にとって買い物代行はありがたい助けになる。  また休校や休園による連日の自宅育児に疲れた人にとって、子どもから離れての一人時間は気持ちを切り替える上で貴重だ。このように、「できる人が、できることをする」ことで地域住民同士が支え合っている。  先に紹介した事例のように、住民同士が協力することを「共助」と呼ぶ。かつては「お互い様」の精神で地域における助け合いが盛んに行われていたものの、高齢化や単身世帯の増加などにより、周りとの繋がりが希薄化。共助の機能低下が懸念されていたが、コロナ禍を力を合わせて過ごそうという動きが起こっている。

支え合いによって、地域にコミュニティが生まれる

 共助が盛んになることのメリットは、地域にコミュニティが生まれることだ。マスクやオムツをおすそ分けしたり、オンライン井戸端会議をしたりすることで、住民同士が繋がる。これにより、コミュニティができあがる。  取材直前、六人部さんはこのようなツイートを投稿していた。 「過去数十年くらいで多くの人は所属するコミュニティを失ってきている。(中略)血縁、地縁、会社などのコミュニティは都市化や働き方の変化もあり弱体化し続けている」  コミュニティと言うと、六人部さんのツイートにあるように「血縁」や「会社」を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。しかし核家族化や単身世帯の増加、働き方の変化などによって、血縁や会社との繋がりは決して強固とは言えなくなっている。  しかし新型コロナウイルスによる暮らしの変化により、マチマチユーザーのように実際にご近所の温かさに触れた人もいる。それまでは「隣に住んでいる人を知らない」「自治会の活動には興味がない」と思っていた人が、「自分が住んでいる地域は意外といい場所なのではないか」と地域の魅力に気がつくようになる。  「何かあったら助けてくれる」「気軽に頼れる」人が近くにいればいるほど、生活に豊かさを感じるし、孤独感は薄まっていく。新型コロナウイルスが終息した後にも、コロナ禍で体験したご近所繋がりの素晴らしさ、地域コミュニティの大切さは記憶に残り続けるはずだ。 <取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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