「次亜塩素酸水」の消毒薬としての評価に厚労省と経産省で食い違いの謎

経産省による評価

 厚労省が次亜塩素酸水について新たな見解を出さない中、経済産業省が外郭団体の独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に委託し、NITEが更に5箇所へ再委託した評価結果が2020/05/01に公開*されました。 〈*新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について、第2回検討委員会を開催しました。2020/05/01製品評価技術基盤機構(資料3)検証試験の結果について2020/04/30 NITE この資料を見るると、「次亜塩素酸水」は、エンベロープウィルスであるインフルエンザウイルスに対して絶大な効果を見せています。それではこの結果を採用できるのでしょうか。答えは否です。  個々人で「自己責任」で意思決定するのならばNITEの資料を意思決定材料にすることを止めることはできません。しかし、そうでないのならこの資料はTake noteする(参考にする)ことで精一杯です。  理由は、この評価の正確性と正当性が分からないためです。まず、同時に公開された資料には非公開箇所があります。また四つ評価機関について名前は公開されていますが、A,B,C,Dとの組み合わせが分かりません。更にD機関だけ実験条件が統一されておらず代用ウィルスのインフルエンザ型も違います。極めつけは、次亜塩素酸だけD機関のみでの評価です。おいおいおい……。  また厚労省の報告書と異なり、所詮はpdf化しただけのパワーポイント資料です。考察等、子細は全く分かりません。これで学術的に合意を得ることは無理です。  この結果そのものは、明るいものですが、この程度の資料に個人と集団の生命と健康に大きく関わる判断を委ねることは自殺行為と言うほかありません。やはり経産省は、経済振興省官庁であって、厚労省とは根本が違うと考えるほかありません。  筆者は、厚労省による評価または、厚労省による評価基準に則った評価を待ちます。とくに統一した条件下、再現可能な公開条件下でのコロナウイルス(代替エンベロープウイルスで良い)に対する評価と、次亜塩素酸水の品質維持条件・期間について厳密な評価が公開されることは必須です。  これらの課題さえ解決されれば「次亜塩素酸水」は、堂々と市中に流通できるようになります。逆に現在、経産省主導で行っているような「次亜塩素酸水」だけを特恵的に扱う危険な評価は行政が行って良い事ではありません。何か不幸な事故が起きれば、次亜塩素酸という見込みのある物質の商品としての命脈を永遠に絶つことになります。

エチルアルコールは何処にありや 何処にありや。全世界は知らんと欲す

「エチルアルコールは何処にありや 何処にありや。全世界は知らんと欲す(WHERE IS RPT WHERE IS ETHYL ALCOHOL RR THE WORLD WONDERS)」  消毒用エチルアルコール(エタノール)が市中から消え失せてすでに5ヶ月目に入ろうとしています。このために医療機関、介護・福祉機関だけでなく市民も困り果てています。  本シリーズ第5回第6回で解説したように、エタノール自体は、国内に大量に存在するにもかかわらず、薬機法(厚労省)、酒税法(財務省・国税庁)、アルコール事業法(経産省)の制約と省庁間の利害調整のために年間81万キロリットルが流通するエタノールが目詰まりを起こし、市中に出てきません。とくにエタノールの大部分、55万キロリットルを管掌する経産省が何もしていないようにしか見えません。あの国税庁ですら医療機関向けに消毒用のお酒について非課税扱いを始めたというのに、事業法アルコールの酒税相当加算額1リットルあたり1,000円も相変わらず特定アルコールには課税されたままです。  医療機関や介護・福祉機関だけでなく、市民が消毒薬不足に困り果てて右往左往する理由は経産省にあると筆者は指摘します。  そういった中、経産省は関連外郭団体のNITEに、以前からその市中での流通には解決すべき課題が山積している「次亜塩素酸水」について厚労省を差し置いて代用消毒薬として流通することにお墨付きを与えようとしてます。  経産省にはもっと大切なやることがあります。さっさと事業法アルコールのなかで非課税扱い(酒税相当加算額免除)である一般アルコールを「高濃度エタノール製品」として非課税のまま流通させれば良いのです。  消毒薬については、国によるプッシュ型支援の一環か、医療機関に消毒薬を送付し始めましたが、医療機関側は求めもしない製品が、本来の価格の数倍という「極めて高額」かつ「代引き」で送付されるため、詐欺と判断して受け取り拒否する事例が生じていると報じられています*。 〈*国あっせんの高額消毒液 県内60診療所が購入拒否2020/05/21神戸新聞〉  アベノマスクやマスクチーム、消毒薬などやっていることはかつてのブレジネフ末期以降のソ連邦における流通の大混乱と全く同じ失敗です*。 〈*ソ連邦は、計画経済によって物流も中央統制のプッシュ型流通であった。そこには需要側の都合は一切考慮されず、長期間の欠品、突然の大量供給の繰り返しであった。結果、ソ連邦市民は、老若男女を問わずアヴォーシカ(もしかしたら!)と呼ばれる網袋を必ず持ち歩き、行列を見つけたらとにかく並ぶ習慣となった。何を売っているかは並んでから聞く。パンでもラードでもバターでもウォトカでもハムでも靴でも何でも、アヴォーシカと行列と幸運で手に入れた。(価格は、国営商店の2〜3倍とかなり高いが市場は別)〉  経産省は、火事場泥棒とみられても仕方ないような不完全な消毒薬評価などせず、アルコール事業法、とくに一般アルコールの特例的な消毒向け解放を行うことが第一です。  そうすれば、エタノールと次亜塩素酸ナトリウムの潤沢な流通で、消毒薬不足など「パパッと解決」することは間違いありません。内閣支持率アップに大貢献です!
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どうしても次亜塩素酸を使いたい方へ
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