——MOL53(燃えるゴミ)名義でも活躍されていましたが、なぜRAWAXXX(ローワックス)に変えたんですか?
RAW:「
とりあえず変えたかったんですよ(笑)。MOL53って名前も3つか4つめなので。しっくりこないから、名前は何度も変わってるんですよ。
RAWAXXXもしっくりこないから変えようと思ってる(笑)。なりたいMC像と相手が受け取っている俺のMC像が違いすぎて、その時点で名前を捨てたくなるんですよ」
正社員:「馴れ初めに話を戻すと、一番最初に戦極で
戦極caicaというレーベルをやろうって話になったんです。
サイプレス上野さんと『
なんでMCバトルからスターって出てこないんですかね』って話をしていたら、上野さんが『
じゃあお前がやればいいじゃん』と。それで、『俺はそういう人間だ』と思って(笑)。そのとき、誰をレーベルに入れたらいいんだろうってなったときに、アスベストってラッパーは戦極の司会をやってたので出すと」
——まずは身近な人から。
正社員:「次に俺が出したい人を考えたときに、
UMBの優勝者で考えたんですよ。そしたらずっと
R-指定、
晋平太、
般若、
鎮座DOPENESSとかで、全員自分でやれる人だなと。そのときはR-指定もLibraからアルバムを出すみたいな話もあって」
——わざわざ新しいレーベルで打ち出すアーティストではなかったと。
正社員:「それで準優勝で考えたら、『
MOL53だ!』と。バトルに出ていて、自分も好きで、音楽の才能も感じる人間で……。2012年のUMBで準優勝したときに、『あのMOL53ってヤバいっすね!』って言われて、『俺、昔から言ってんじゃん!』って感じだったんすよ。それで声をかけて、アルバムを出させてくれってお願いしたのは覚えてるんだけど、そこから『
コイツはこんな大変なやつだったのか』と(笑)」
RAW:「(笑)」
正社員:「歴代で会ってきたラッパーでもトップクラスみたいな(笑)。宮崎に住んでたから、やり取りするだけでも大変だし」
RAW:「地元でも戦極から出すってときに、まあまあ揉めたっすね。『
お前裏切るんだ』みたいな。仲悪くなったし……」
正社員:「俺が悪いみたいじゃん!」
RAW:「あとは離婚するときに正社員さんに『東京出てきなよ〜』って言われて。それで行くかとなって1週間後に電話したら、『え、なんで東京来るの?』みたいな(笑)。それで
一回ブチギレて」
正社員:「だって東京来たほうがいっぱい仕事あるじゃん! 家族もいるけど、どうなんだろうなと思いながら話をしてたんだよ。そしたら、奥さんと喧嘩してて、『俺、東京行っていいすか』みたいに言われたから、『えーっ!』みたいな(笑)。
そんなんあるんだと思って」
RAW:「離婚とかあってね。でも、最初は吉田くん(MC正社員)が『おいでよ』って言ったんだよ。話を戻すと、それで
アルバムを出してから、180度変わってるっすね。価値観とか生活とか、
人生が反転しました。その時期から音楽だけをやれたので」
正社員:「最近になってようやく、バトルのファンとかヒップホップファンとかも気づき始めたけど、
MCバトルに出てるラッパーの中で一番尖ったラップしてるし、音に乗れるし、刺さること言えるし。
みんなRAWAXXXがヤバいってことに気づくのが遅かったと思う」
——それはこの対談が企画にあがったときも仰ってましたね。
正社員:「
バトルを見ていても、音源出したらコイツ光りそうだなって感じてましたよ。ただ、俺がちょっと力不足で、
レーベルとしての戦略もちゃんとできなかった。本当はRAWAXXXを売り出すなら、『戦極caica』ってレーベル名じゃないほうがよかったと思う」
——戦極caicaはどういうレーベルなんですか?
正社員:「戦極caicaはMCバトルを頑張ってるアーティストから出すってスタンスで始めたんですよ。
アスベストはナード、エモい系のラップをしていて、そのあとはストリート系のヒップホップ、
MOL53(
RAWAXXX)。その次は
ACEに聞いたら『やりたいです』っていうから、ACE。ACEはポップで、そのあと
田中光ってアーティストもいて、
全員色が違うんですよ。全員色が違うから、『何このレーベル?』ってなってしまった」
RAW:「うまくやれなかったですね。
混沌としてた。ヒップホップのバブルが来るのが遅くて、
みんななんの計画性もないままやってたんで。ブレーンも全くいなかったし、シーンがこうなるって思ってなかったですね」
順風満帆とはいかなったRAWAXXXのキャリアだが、そのストイックな姿勢が実を結ぶに至った背景とは……。対談は次回に続く!
<取材・文/HBO編集部>
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く