政権に批判的な発言を封じ込める政府。コロナ騒動の陰で行われる「検閲」

 コロナウイルスが猛威を振るうなか、黒川弘務検事長の勤務延長問題に揺れている日本。多くの著名人が反対の声を挙げたことも話題になっているが、一般市民が外出自粛や休業に苦しむ陰で、政府の傍若無人とも言える動きに憤っているのは日本だけではない。

ロックダウン下の墓参りを批判

カジク擁するバンドKULTのライブ 例えば、日本では安倍明恵総理夫人の大分旅行や花見が問題となったが、東欧のポーランドでは元首相で現与党「法と正義」の党首による「墓参り」が問題となった。  ポーランドでは大型量販店や飲食店、エンターテイメント施設が軒並み休業を余儀なくされ、外出時にはマスク着用が必須になるなど、厳しい制限が行われていた。5月18日からは一部制限が解除されたが、墓地なども閉鎖されるなか、ヤロスワフ・カチンスキ党首がリムジンで墓参りに訪れたことが批判を呼んでいる。  しかし、問題はこの墓参りそのものにとどまらなかった。同氏の行動について歌った楽曲が「検閲」を受けたことで、事態がさらに拡大することとなったのだ。  ロックダウン下での墓参りを批判したのは、著名なミュージシャン、カジク・スタシェフスキの「お前の痛みは俺のより偉い」。この楽曲がポーランド・ラジオ(日本でいうNHK)3チャンネルのヒットチャートで、視聴者の投票により1位になったのだが、その直後に削除されたのだ。

検閲への抗議で退職する職員も

 この騒動について、ニュースサイト「naTemat」は次のように報じている。(参照:naTemat)  “問題なのは、同曲が「法と正義」の党首(で元首相の)、ヤロスワフ・カチンスキについて触れていることだ。同氏は一般向けにはパンデミックによって墓地が閉鎖されているなか、母の墓参りにリムジンで乗りつけていた。  カジクの曲が1位に選ばれたことは普通のことだと思われていた。しかし、それは長く続かなかった。土曜日にはポーランド・ラジオの選曲規約に関する1998年の情報がすべて消滅した。同夜には3チャンネルのディレクター、トマシュ・コヴァルチェフスキが、投票は無効になったと発表した。  「2020年5月15日、3チャンネルのヒットチャートの電子投票で規約が破られ、選曲リスト外のものが選ばれました特定の曲に対する操作が行われ、最終的な集計結果が間違ったものとなりました」とコヴァルチェフスキは話している。ポーランド・ラジオの代表、アグニェシュカ・カミンスカは、検閲とはなんの関係もないと強調した”  同局はあくまで「検閲ではなく、不正が行われたので削除した」としているが、記事のなかにも書かれているとおり、ポーランド国内で人気のアーティストが1位になることはなんら不思議ではない。削除の理由も不明瞭なもので、局に対する抗議として退職する職員も現れている。  “「公にメッセージを発するつもりはありますか?」と記者は尋ねた。 「なんでだ? この出来事自体がメッセージになってるだろ」とカジクは答えた。  たしかに、金曜日にチャートが発表されてから起きたことは、十分なメッセージになっている。LP3の創設者マレク・ニェジヴィエツキは3チャンネルを去ることにした。さらに続々とアーティストたちが同局をボイコットしている”
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直接的に与党党首の行動を批判する歌詞
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