ネット会議がモチベーションを下げてしまっている最たる例が、ネット会議参加者は
マイクをミュートにして、ビデオもオフにして参加することがルールや慣習になってしまっているケースだ。
雑音が入るので、音声をミュートにすることを明示的なルールか暗黙の慣習かは別として、奨励していることが少なくない。しかし、マイクをミュートにしているので、
発言しなくてもよいという意識がひろまったり、発言できなかったり、発言のタイミングを逸してしまったりする。また、ビデオをオフにしているので、お互いの姿が見えない。
ネット会議を実施したとしても、
双方向の議論ができないので、意欲が上がる機会にならない。沈黙している相手、見えない相手に対して語ったり、ただひたすら聞き流している状態では、逆にモチベーションが下がってしまう。
そこで私は、
ネット会議の目的を明確にすることをお勧めしている。方針を知らせるネット会議であれば、百歩譲って、マイクやビデオをオフにして参加しても一方通行の伝達をするだけで目的は果たせる。
しかし、アイデアを出し合うネット会議や、一定時間内で合意形成する会議の場合は、マイクやビデオをオフにして実施したのであれば、目的を果たせない。
マイクやビデオを常時オンにして、アイデアを出し合ったり、合意形成すること自体がモチベーションを上げることに役立つ。
そして、アイデアを出し合う会議は、モチベーションファクターで捉えると自律裁量型の人をはじめ牽引志向の人のモチベーションを高めやすい。しかし、一定時間内で合意形成する目的の会議は、牽引志向の人も、調和志向の人も、
それぞれの志向を発揮して合意形成に加担するので、両方の人のモチベーションを高めることに役立つのだ。
一定時間内に合意形成する会議は、次の4つの質問で進行する。
プロセスを区切って進行する方法は、対面よりもリモートの方がコントロールしやすいので、試してみることをお勧めする。
合意形成の4質問:内容
洗い上げ質問:異論や懸念を洗い上げる質問
掘り下げ質問:異論や懸念の深刻度を掘り下げる質問
示唆質問:前提を置いて方向性を示唆する質問
まとめの質問:その方向性で合意できるかを問いまとめる質問
質問:4質問を使える会議の種類
会議といっても、いろいろな種類の会議があります。合意形成のための4質問の効果がある会議は、どのような会議ですか? あらゆる会議で活用できる方法でしょうか?
回答:一定時間内に合意形成するための会議で使う
方針を告知することが目的の会議、
自由に意見を言い合うことが目的の会議、
アイデアを出し合うことが目的の会議などでは、別のスキルを用います。
合意形成のための4質問は、あくまで、一定時間内に合意形成することが目的の会議で効果のある方法です。
従って、会議の規模でいえば、
実質的に合意形成できる10人程度で行う会議で有効な方法です。50人や100人の参加者を巻き込むためには、
表現力・構成力のスキルを活用することがお勧めです。
なかには、参加者が本音を発言しない会議もあると思います。そのような場合は、
モチベーションをコントロールするスキルなどを用いて、ある程度本音を発言できるような状態になってから活用します。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第189回】