結婚を前提としている制度なのに、子作りや子育てには配慮が足りない
境治と私のYouTube配信「メディア酔談」(提供:境治)
そこで私は、以下のようなことを考えた。
男を戦場に駆り立てるための戦時体制は、戦後もビジネス戦場に駆り立てるための仕組みとして残り、女性はいずれも「銃後の守り」の専業主婦と位置づけられた。
境が指摘する通り
「集団に所属する」ことのメリットが、今なお最大限図られている。コロナ対策でフリーランスがおいてけぼりにされそうになったのは、その象徴だろう。フリーで働く人が政策立案者の目線に入っていない。フリーランスとフリーターの区別すらついていない政治家もいた。
社会生活で組織への所属と忠誠が求められると同様に、私生活では結婚して夫婦となり家庭を築くことが当たり前とされている。年金の第3号被保険者はそのための利益誘導だ。
第3号被保険者はザックリ言えば、サラリーマンの夫に扶養されている一定の年収以下の専業主婦のことで、国民年金の保険料を自分で納める必要がない。専業主婦の特権とも言える。
このように結婚が一人前の前提のような社会通念があるから、
男も女も「まだ結婚しないの?」とディスられる。
ところが結婚前提の制度のくせして、意外にも子作りや子育てにはまったく配慮の足りない制度設計になっている。保育所不足と「保育園落ちた日本死ね!!!」の叫びはその典型。医療費も高齢者に手厚く子育て世帯に冷たい。
教育も、コロナ対策で真っ先に閉鎖されたのが学校ということがすべてを物語っている。これはホントに不思議。「産めよ、殖やせよ」じゃなかったんかい! 日本は抜本的制度改革をしないと国家として生き残れないし、そこに暮らす私たちの幸せもない。
境治(本人提供)
境は
『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない』(三輪舎)という本を上梓している。まさにその通りだ。境が本を出したのが6年前。いまだに事態は変わらない……というより悪化しているのでは?
そして何より制度の問題以上に、私たちの社会全体、この国に暮らす人々が、子どもたちと子どもを育てる親たちに冷たい目線を向けていないか?
「コロナ対策で学校が休みとなった子どもが公園で遊んでいる」と苦情が出たという。保育所が近所にできることに反対する住民がいる。自分さえよければいい、自分の家族さえよければいい、そんな風に思ってないか?
子どもたちが将来、私たちの医療費や年金を負担してくれるんですよ。それでいいんですか?
子どもと、子育て中の親たちに優しいまなざしを。子育てしたくなる国作りをしようじゃありませんか。それはきっと、他者に優しい寛容な社会、みんなが幸せになれる社会作りにつながると思う。
<文/相澤冬樹>