アルコールは何処に行った? 対ウイルスで知っておくべき「アルコール」のこと

アルコールの種類

 アルコールがコロナウィルスを破壊することははっきりと分かっているのですが、どのようなアルコールがよいのでしょうか。身の回りにはいろいろなアルコールがあります。  この場合、答えはエタノール一択です。イソプロパノールが混ざっているエタノールでも構いません。イソプロパノールでもよいのですが、医療現場で使うならともかく、一般向けにはあまり出回っていません。  とくに身近に手に入るアルコールとしてはメタノールとエタノールがあります。

「飲んだら失明、最悪死ぬ」のがメタノール

【メタノール】  メタノールは、溶媒用や燃料用、工業原料としてとして潤沢にありますが、一般には使ってはいけません。メタノールは、天然ガスから工業的に生産されるので極めて大量に製造され、安価です。脂質も溶かしてしまいます。
メタノールの構造式

via Wikimedia Commons(Public Domain)

 しかしメタノールは、極めて毒性が強いのです。メタノールは体内でアルコール分解酵素によってホルムアルデヒドになります。ホルムアルデヒドの水溶液をホルマリンと称します。これは溶媒であり、生物標本を保存する薬品です。  メタノールを誤飲したり目から吸収すると、メタノールは網膜で迅速にホルムアルデヒドへと酸化され、網膜を破壊し失明します。更にホルムアルデヒドは迅速にギ酸へと酸化され、視神経を破壊します。これによって永久完全失明します。視神経が破壊されますので、治療不能です。  戦後、闇市ではバクダンといってメタノールで嵩増しされた密造酒がでまわり、多くの人が失明したり、命を落としたとされます。また合衆国でも禁酒法の時代におなじ事が起きたとされます。  メタノールは霊長類に対して毒物ですが、致死量は0.3-1.0g/kgと、ある程度の許容量があります。筆者の場合は30gから100g飲むと死んでしまいます。エタノールの場合はその10倍くらいで急性アルコール中毒になって死にます。そしてメタノールでも「酔う」ことができるため、お酒にメタノールを混ぜることが横行しました。しかし、メタノールへの目の感受性はより敏感なため、死ぬ前に完全失明してしまうのです。  従って、メタノールを一般家庭で使うことを筆者は「やっては駄目なこと」としています。  メタノールは、燃料用アルコールが身近なものですが、これには20%程度のエタノールが混ぜられています。これによって誤飲時にエタノールも代謝されることで時間稼ぎをし、胃洗浄や人工透析などの治療までの時間稼ぎをするためです。運がよければ助かりますが、筆者は無理だろうと考えています命は助かっても失明の可能性が極めて高いです。

お酒に入っているのが「エタノール」

【エタノール】  エタノールはお酒にはいっているアルコールです。発酵によるアルコールとエチレンから合成した合成アルコールの二種類がありますが、本邦では発酵アルコールの方が主流です。  合成アルコールの原料であるエチレンは、ナフサ(粗製ガソリン)を原料とした石油化学製品ですがオイルショックや資源バブルによって原油価格が高騰したことと、温暖化対策のための政策的理由から発酵アルコールが重視されてきました*。ただし今日では新・化石資源革命(シェール革命)によって天然ガスが極めて潤沢且つ安くなったため、エチレンの原料物質がナフサから天然ガスへと転換が急速に進みつつあります。筆者は近い将来、費用、温暖化対策の両面で合成アルコールが見直されるのではないかと考えています**。 〈*エタノール燃料の原料が、ナフサでは本末転倒である〉 〈**発酵アルコールの原料であるトウモロコシなどは、栽培に多くの石油を要しており且つ、人間の食料と取り合いになり飢餓の原因にもなったとされる〉  なお、発酵アルコールも合成アルコールもおなじエタノールで差異は全くありません。(炭素の同位体比が違うというのはご勘弁)
エチルアルコール(エタノール)の構造式

via Wikimedia Commons(Public Domain)

 エタノールでは無水アルコール(99%以上)、95%アルコール、変性アルコールが入手可能です。また、消毒薬としては77%エチルアルコールが供給されています。  無水アルコールは、99.9%無水アルコールが薬局では500mLあたり850〜1500円で販売されており、最も身近なものです。但し、エタノールは共沸のために蒸留できるのが95%止まりです。無水アルコールにはかつては、ベンゼン(発がん性がある)、現在はペンタン(体に入れるものではない)が混ぜられており、薄めても体によくありません。  この飲むと体によくない無水アルコールには、500円の酒税相当の納付金がかかっています。この納付金は、エタノール1Lあたり1000円とたいへんな重税の上に税金に消費税をかけるという屁理屈が罷り通っています。  Amazon.comで最安値820円だった無水アルコールは、そのうち500円が納付金です。  95%アルコールは蒸留したエタノールで成分はエタノールと水です。工業原料、実験用試薬として広く使われています。工業原料、実験用途の場合は、手続きによって免税となり、免税証書を張りますので筆者の学生時代は、一斗缶(18L)でも一万円前後だったと記憶しています。免税対象外ですと、納付金だけで18000円もします。  飲用可能であるため免税エタノールは、経済産業省の使用許可が必要であり、使用については、使用等の記帳、使用数量等の定期報告等が義務となっています。筆者は学生時代に少し舐めましたが、舌が脱水されて痛いだけでした。  変性アルコールは、エタノールにイソプロパノールなどの有機溶媒を二種類状混ぜることで飲用不能とする代わりに手続き無しで非課税としたものです。たいへんに安く一斗缶(18L)で1万円しませんでした。  変性アルコールのある製品は、エタノール85%、1-プロパノール10%、2-プロパノール5%の組成です。これを蒸留しても共沸のために蒸留後もプロパノールが残留し、苦みがあってとても飲用にはできません。  何故、飲めないもの、食べられないものの味を筆者が知っているかというと、毒性を事前に調べた上で、大概のものは筆者によって舐められているからです。筆者はアリクイのようになんでも最初はペロペロ舐めてしまいます。勿論、事前に毒性をきちんと調べます。そして大概、「苦い」目にあってきました
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アルコールはどこに行ったのか?
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