コロナ禍の間に、要りもしないガラクタを買うための「クソくだらない仕事」を見直せ

過分な生産・消費主義が、世界のさまざまな問題を生んでいる

考え悩む人は増え続けている

「自分の仕事は、世の中や人のためになっていない」と考え悩む人は増え続けている

 経済学者のケインズは「20世紀末には1日に3時間だけ働けばいい社会になる」と書いた。ところが、現在の人はもっと働かざるを得ない状態になっている。その原因は明快。さらなる消費を促されるようになったからだ。より買うためには、より働かねばならない。それが「過分」と言うことである。  自分のやっている仕事に全く意味がない、自分の仕事の存在意義さえ疑っていると思っている人は、イギリスで37%、オランダで40%、ベルギーで30%。日本でもそれに準ずる調査で、自分の仕事が世の中に役立っていないと答えたのが41%。  概して言えば、3〜4割が「自分の仕事は世の中に必要ない」と思っているというわけだ。ブルシット・ジョブを減らして、必要ある仕事をワークシェアできれば、理論上は労働時間を今より3〜4割減らせる。どうだろう、あなたの仕事は「ブルシット・ジョブ」ではないか?   そうは言っても、必要不可欠ではない仕事に翻弄されて生きているのが俺たちの残念な社会だ。何のために? 収入を得るためである。「少しでも過分に収入を得たい、過分に消費したい」と憧れる。それができなければ劣等感が膨らんで、落伍者扱いもされる。だが、このままでいいのか?  その過分な生産主義と消費主義によって、必要ない争いや悲劇が生まれ、地球環境が壊され、格差と貧困が圧倒的に広がり、その報いが大災害やパンデミックという形で人類を脅かしていることを、そろそろ言い訳せずに認めよう。  今、世界的危機の中でさまざまな価値観が変わる時である。自分の仕事について考えてみてはどうだろう。アナタの仕事は本当に必要なのか。必要不可欠な仕事なら見合う収入が得られているか。  テレワークができる世の中になるのは大歓迎だ。一方で、それらの仕事は必要不可欠ではない仕事かもしれない。だとしたら、そろそろ「ブルシット・ジョブ」を卒業して、人や世の中に役立つ仕事を増やしていこう。そうでないと俺たちの社会はもっと疲弊し、もっと大きな危機を繰り返すハメになる。

不要なものを過分に作る人は、人類の存続に対する“加害者”

無駄なエネルギー

「ブルシット・ジョブ」は人に無駄なエネルギーを強いるうえ、電力の無駄なエネルギーも費やす(© photosku.com)

 今、消費がそうそうできない。生産もそうそうできない。だが、たくさんの時間ができた。生きるうえで何が必要で、何が必要でないのか、嫌が応にもわかるはずだ。アナタの仕事が必要ないものを過分に作り出すものだとしたら、アナタは人類の存続に対して“加害者”の側面が大きいということだ。  だとしたら、人々が生きるうえで必要な仕事に移行してみないか。そして必要以上は働かないことにしてみないか。収入が減っても大丈夫だ。必要ない消費を減らせばいいだけなのだから。ブラッド・ピットはこう言った。「要りもしないガラクタを買うために、嫌な仕事をしている奴が多すぎる」。  こんなことを言っていると、「アフターコロナにV字回復しないと、経済を大きくしないと、もっと働かないと、もっと稼がないと、もっと消費しないと、自分も世の中も良くならないじゃないか!」という問いが飛んできそうだ。  最後に、歴史学者ルトガー・ブレグマンの言葉を拝借しよう。 「テレビの視聴時間が長いのは、アメリカ、トルコ、日本など労働時間が長い国。本当に疲れている時、余った時間でできるのはテレビを見ることくらいです。一方、より多くの人がボランティア活動に従事し、子どもやお年寄りの世話、作曲や芸術活動に携わるのは、労働時間が短い国なのです」
自らの心が喜びを持てる仕事に降りて行こう

誰が恩恵を受け誰が犠牲を被るのかかわからない複雑化した仕事よリ、人に「ありがとう」と喜ばれたり、自らの心が喜びを持てる仕事に降りて行こう。それが時代の要請だ

【たまTSUKI物語 第25回】 <文/髙坂勝>
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
1
2