恋人に会えない日々から生まれた、話題のビデオ会議Zoom。急伸長による様々な現象

急伸長とセキュリティ上のトラブル

 急成長した Zoom だが、それゆえに様々なトラブルに見舞われている。その大きなものが、セキュリティ上の問題だ。  暗号化に関する懸念、ビデオ会議への乱入、脆弱性、ユーザデータの取り扱いが、ネットの多くのメディアで指摘された(参照:Yahoo!ニュース)。  また、国や行政機関、企業などで、Zoom の使用を禁止する通達が出たこともニュースになった。米上院は議員らに対し Zoom を使用しないよう通達した(参照:ロイター)。台湾やドイツ外務省、インド政府、Google などの企業も使用を禁止している(参照:Engadget 日本版TechCrunch JapanGIGAZINE)。新聞でも、危うさを訴える記事が掲載された(参照:日本経済新聞)。  注意しなければならないのは、Zoom の適性な利用だけではない。Zoom の人気に便乗した偽物も出回っている。正規ではない Zoom をダウンロードしてしまったというトラブルも発生している。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)でも注意喚起をおこなっている(参照:にゃんたくのひとりごと朝日新聞デジタル)。  Zoom は4月27日に、セキュリティを強化した Zoom 5.0 の配布を開始した(参照:PC Watch)。同社は急ピッチで、発生した問題に対応している。

対抗する各社

 このように、様々な物議を醸しながら流行っている Zoom だが、同種のソフトも指をくわえて見守っているわけではない。  最も露出が高く、売り込み攻勢をかけているのは、Microsoft の Microsoft Teams だ。また、Facebook は、4月24日に Messenger Rooms を発表した(ITmedia NEWS)。Google も4月29日に、Google Meet を一般向けに提供を始めた(参照:ケータイ Watch)。  Microsoft、Google、Facebook というIT大手が、この分野で、激しく Zoom を追撃している。しかし現在は Zoom が抜きんでて人気がある状態のようだ(参照:Google トレンド)。  新型コロナウイルス以降、世の中の働き方が大きく変わろうとしている。旅行や対面業務が大きく縮小する一方、遠隔で対話する仕事が急拡大している。新しい市場が誕生して、この業界は戦国時代の様相を呈している。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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